過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

美しいガクアジサイだった

「花は西日を避けたほうがいい」っていわれない?
と聞かれた。
うーん、意味がよくわからないけど……。
その方は、ぼくに花をあげようということだった。でも、西日のあたる花だから、そんなによくないんで……という意味を含んでいたのか。
それは、美しいガクアジサイだった。お星さまのようなかたちの花が周りについていた。八重の淡い紫色。
「きれいな花だねえ、めずらしいね」。
しばしながめていた。挿し木をしたら、ちゃんと育つよと。その花をあげたいという。
「この花はね。たったひとりの娘が、母の日のお祝いにくれたものなの。いまじゃ、唯一の形見。こんなに大きくなってね。枯れさせちゃ、もったいない」。
この花を株分けしたいから持っていってね、と。
ひとり暮らし。夫を数年前に亡くし、頼りのたった一人の娘も亡くした。
いろいろと人生の深みに出会う。