こんなに暑いから、無理かなあと思っていたが、99歳のFさんは「行きたい」というので、お迎えに行く。
施設に着いた。けれども、「足が痛いから下りるのはいやだ」と。
──大丈夫だよ、支えるから。
「いま無線が入って、早く帰ってこいという。胃もいたい」。
──それは、こまったねえ。じゃあ、しばらくクルマのなかにいる?
「ああ、いいよ」
ということで、冷房を効かせたクルマの中でお話を聞いたり、大きな歌詞カードを持ってきて、数曲歌う。
タイミングを見て、
──そろそろいいかなぁ。
と、おりてもらった。この間、40分間。
じゃあ、歌でもうたおうか。よく知っている歌。
歌い終わるたびに「ありがとう」と合掌される。
Fさん、スタッフにいつもこう言う。
「おねえさん、つらいことがあったら、言いないね。負けちゃあだめだよ。勝ちなよ」。
私には、こう言う。
「お金で困ることがあったら、なんでも言っておくれ」。
こうして昼間は90代のお年寄りのお世話、夕方は5歳のあかりの世話(自転車の操作を教えて、川に泳ぎに行く)という一日。