過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

運を呼び込んでくれる福の神と思うようにしている

99歳のFさん。朝になって、いつものようにお嫁さんから「おばあちゃんは、きょうは体調がいいので、施設にいきたいと言っています」という電話を頂いて、お迎えに行く。
しかし、お迎えに行くと「足が痛いので行けない」と言う。それではと、戻る。しばらくして「やっぱり行きたい」と言うので、お嫁さんが施設に連れてきた。
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さて、クルマから施設に移るとき、一筋縄ではいかない。いざ移ろうとすると、「足が痛いので帰りたい」と言い張る。合掌して「どうか、帰らせておくれ」と言われる。
毎回のパターンなので、そこは想定内。さて、どうするか。
無理に入ってもらうわけにはいかない。
いつものように、模造紙大の歌詞とギターを持ち込んだ。
Fさんは、歌詞を見ると、「いいかね、いいかね」と目で追っている。もう歌う気になっている。そのまま「富士山」「しゃぼん玉」「浜千鳥」三曲ばかり歌う。
こうなると、もう可能性はある。「じゃあね」と、くるりと足を移動させて。はい、右足から。次に左。「怖い、怖い」と言う。「大丈夫だからね」とそろり、そろり。身体の重心がすこし映れば、もう移動しようという気になってきている。
「いいかね。いいかね」と怖がりながら、歩いていただいた。
なにしろ、もう99歳。腰も曲がっているし、耳も遠い。本人は、たいへなことと思う。一歩一歩が、山登りするような努力。
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今年、100歳を迎える。春野町には100歳を超える方は、けっこういらっしゃるけれど、自宅で過ごされている方というのは、ほとんどおられないと思う。
自宅での介護というのは、やはりたいへんだ。トイレに何度も起こされるし、転倒が心配なので気が休まらない。うちの施設にいるときでも、トイレは7〜10回くらい行かれる。その都度の介助が必要となる。
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しかし、Fさんの無邪気さ、明るさ、屈託のなさはすばらしい。運を呼び込んでくれる福の神と思うようにしている。
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