過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

「李柏文書」(李柏尺牘)をめぐって

西域(さいいき)、シルクロード楼蘭(ろうらん)、騎馬民族五胡十六国。仏教のやってきた道。なんとも、ロマンあふれる土地であり、時代である。
4世紀から5世紀のはじめにかけて、中国の北方に5つの異民族(五胡)が興亡した。その中で16の国が興廃し、「五胡十六国」と呼ばれる。
南方には漢民族の王朝である東晋(317~420)。西域を支配した国に前涼(301年 - 376年)」があった。その西域長史(いわはシルクロードの入り口の責任者)として、楼蘭の地に進駐した将軍が、李柏(りはく)という人である。


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その李柏将軍が、焉耆(えんき・カラシャール)王に送った紙の手紙の草稿が、現存していた。紙に書かれた最古の文書であるという。「李柏文書」(「李柏尺牘」重要文化財)という。
発見したのは、西本願寺の第22代門主大谷光瑞ひきいる大谷探検隊。かれらは、1902年から1914年にかけて3回に渡って西域(中央アジア)の仏教遺跡の調査、古写経の収集、発掘などを実施した。
この「李柏文書」は、1500年余も流砂に埋もれていたわけだ。紙に書かれたものとしては世界最古のものという。

 
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ちなみにこの頃から、中国に仏教が伝播していく。鳩摩羅什(クマーラジーヴァ、344年 - 413年)が活躍したのもこの時代。『妙法蓮華経』『阿弥陀経』『維摩経』『大智度論』 『中論』『摩訶般若波羅蜜経』など、日本仏教が基礎においている主要経典は、ほとんど彼が訳したものだ。
そういった背景も含めて、「李柏文書」というのは、現存する遺産としてたいへんな価値があると思われる。現在、龍谷大学に厳重に保管されている。


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先日、友人の書家、中島光風さんから連絡があった。一生に一度でいいから「李柏文書」を見たいという。彼女にアドバイスさせてもらった過程で、いろいろとこの文書について興味が湧いてきた。
光風さんは、来週、龍谷龍谷を訪ねて、この「李柏文書」を正式に見せていただけることになったという。「天にも昇る気持ち」と言っていた。

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