いつもの診療所に行く。
受付で聞かれる。
──体調はいかがですか。
「はあ、あいかわらず低空飛行で……」。
先生がやってくる。
──「やあ」。
「ごぶさたです」。
先生は、パソコン画面を眺めて、今までの診察記録を見ている。
──う〜ん。〈まずまず〉というか〈ぼちぼち〉というか。
「はあ、そんなところですか」。
──「じゃあ、舌を見せて」 べーっと舌を出す。
「裂紋薄白苔」(れつもんはくはくたい)。 という診察であった。
ちなみに、漢方が専門の先生である。僧侶の資格もある。 坊さんから医者になる人は、たまにいるが、医者から坊さんになる人は、なかなかめずらしい。
そこは、デイサービスも運営していて、施設には仏間がある。毎朝、希望者ともに般若心経をよむ。本尊は薬師如来。本人は、浄土真宗なんだけど。私設図書館(まほろば図書館)も無償というか身銭を切って運営されている。
こんど4月に、先生が交代になると聞いた。「交代になったら、なにをするんですか」と聞くと、「百姓をします」と言っていた。