麻原彰晃×南伝仏教僧侶の対談の企画は、ほぼ日程も決まり、あとはパンフレットの内容を詰めていくことになった。
しかし、半月たってもオウムの方から音沙汰がない。やがて、オウム出版のMさんから電話があった。
「じつは、シンポジウムができなくなりました。キャンセルさせてください」。
「え?どうして? そちらのほうから依頼してきたのに」。
「尊師が重体となったんです。山梨の道場の上空に米軍が飛行して、空中から毒ガスを散布されました。いまオウムが攻撃されているんです」。
米軍機による毒ガス散布? まことに奇妙で信じられない話である。だが、そう言うのなら、仕方がない。この話はこれでおしまいということになった。
そうして、その1か月後に、松本サリン事件があった。
このとき、もしやオウムの仕業では?とピンときて、Mさんにそのことを話した。「私たちが、毒ガス攻撃に遭っているのに、そんなバカなことするわけがないじゃないですか」と彼は言ったした。
その翌年、地下鉄のサリンの事件があり、オウムのサティアンが強制捜査。信徒が次々と逮捕されていった。マスコミはオウム報道ばかりとなった。
やがて、ある時、いつもワークショップ会場に借りている国立市の福祉会館の責任者から、呼び出された。「池谷さんは、オウムだという話があるんだけど、どうなの?」と館長は言うのだった。(9/16から連載中︰つづく)