電話局の記念写真を撮ったその瞬間だ。突然、二人の警官に腕を掴まされた。警官はライフルを肩に下げている。
なんだ? というと。「ここは撮影禁止だ。フィルムをよこせ」という。
どうしてだ、というと「空港、橋、公共の施設は撮影禁止なんだ。そんなことも知らないのか」という。
インドである。賄賂をわたせば許してくれるかも。しかし、警官は動じない。泣く泣くフィルムをすべて渡したのだった。
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インドのカルカッタの電話局でのことだ。
友人に銀行に無事入金されたことを報告しようと、電話局をさがした。つながった。「ありがとう、これからインドの旅を楽しむことができる」。その時のことであった。
一ヶ月の休暇をとって、二度目のインドの旅。30年も前のことだ。
イラク航空にした。そこは、チケット代が安かった。
そうして、搭乗員は、ものすごく威張っていた。機内に入るときにも厳重な身体検査。しかし、あとは自由席。飛行中、搭乗員が大声で喋っていてうるさかった。食事もおいしくなかった。
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トランジットでタイに着いた。
その時、たいへんなことをしてしまった。機内に財布を忘れたのだ。せっかくの一ヶ月のインドの旅費だ。
うわあ、せっかくの休暇。お金がないのでは何もできない。どうしよう。どうしよう。
歩いている日本人を捕まえて、お金を借りようとした。
もちろん、貸してくれるはずがない。ありえない。
ひとりの日本人が、「日本に電話して送金してもらえばいい」とアドバイスしてくれた。
そうか、そういう方法があったか。さいわい、東京銀行に勤めている友人がいる。電話してみよう。だが、電話が近くにない。当時は、国際電話もたいへん。大きな電話局をさがして、友人に電話した。
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タイに送金してもらうのがいいか。インドに送金してもらうのがいいか。迷った。安全を見ればタイだ。しかし、入金するまで時間がかかる。週一のカルカッタ便に乗り遅れる。せっかくの休暇がもったいない。
(インドの放浪篇は、ときどき思いついたときに連載)