過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

幕末から敗戦までざっと俯瞰

このままじゃ日本は列強の植民地になってしまう。隣の清国のように。いまの幕府じゃダメだ。「尊王攘夷」(天皇を中核として、異国を撃退する)を旗頭に、幕府をやっつけよう。さいわい、それが国学以来のブームとなって、水戸学、長州などから盛り上がってきた。
ひとつ小異を捨てて大同につこう。薩長が連合して、岩倉たちは宮中も巻き込んで「官軍」となって幕府をやっけた。しかし旗頭の「尊王」はいいが「攘夷」はこまる。日本は近代化しないと、列強に負けてしまう。それは火を見るよりも明らか。
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内実は「尊王開国」にしたい。ところが、孝明天皇は頑固な「攘夷思想」。これは困る。もっと操りやすい人物を天皇に据えて、天皇の権威によって国が治まるようにしたい。孝明天皇はなぜか急死された。
幕府に替わる「権威」は天皇しかない。新しい天皇明治天皇)をもってきて、その方を神様に祭り上げよう。そして、伊勢神宮をトップにして村々の神社を傘下に収めてヒエラルキーを作る。「尊王攘夷」じゃなくて、「尊王開国」でいこう。「文明開化」だ。「富国強兵、殖産興業」だ。
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それまでは、神社とお寺はほとんど一体だった(伊勢神宮でも護摩壇があって加持祈祷やっていた)。仏教は外国の宗教だ。神国日本、神州不滅の国、天孫降臨天皇の支配する国としては、それは具合がわるい。
そこで、神と仏はしっかり分離してしまおう。神社にしても、大整理しよう。村に一つあればい。合祀するのだ。ややこしい神様、権現(本地は仏だが外面は神)、逆賊(平将門なもの)迷信、クニツカミ系統の神(オオクニヌシ系統)など除外してしまおう。中身を入れ替えてしまえばいい。わかりゃしない。
神主たちに村人を教化してもらえばいい。けれども、かれらにその実力と教義は弱かった。そこはやはり、伝統ある僧侶が説法がうまい。ならば、神職も僧侶もともに、国民を強化してもらおう。
海外の近代技術とともにやってくるキリスト教に対抗するには、やはり仏教が説得力がありそうだ。キリスト教対策のためにも、廃仏毀釈はやめて、やっぱり僧侶に活躍してもらおう。その機に乗じて、仏教も積極的に売り込んだ。
たいせつのは、新しい日本の「教典」だ。学校教育では、徹底して天皇が神様で偉大なことを教える。天皇のために身を投げ出す兵隊を作り上げる。その骨子としては「教育勅語」を作ろう。
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さて、開国して海外の近代技術を修得しないと、列強に伍すことができない。さいわいイギリスがたくさん金を貸してくれる。外交的にも段取りしてくれる。その勢いで、朝鮮を支配し、清国と戦った。勝った。さらにその勢いてロシアとも戦い勝ってしまった、いや負けなかった。
ということで、日本はますすます調子づいて、軍備は増強して満州に帝国を作り、五族協和を唱え、白人の手からアジアを取り戻す(八紘一宇)という大義を打ち出した。
ほとんどのアジアに攻めていった(石油を奪うのが目的ではあるが)。そうして、中国、アメリカ、イギリス、オランダなどにも戦争をしかけた。奇襲攻撃だから、最初は勝った、勝った、で勢いはすごかった。しかし、肝心の石油はないので軍艦も飛行機も戦車も動かない。鉄くずだ。
やがて物量作戦と総合力で日本は、負けていく。撤退につぐ撤退。拡散した兵隊を引き上げるのは大変だ。輸送船がもうない。各地で、玉砕に次ぐ玉砕。ついには、特攻隊が現れ、戦艦大和も片道の石油しかないのに沖縄に行く。勝つ見込みなどない。敵の本土上陸の時間稼ぎのためだ。硫黄島もそうだった。
そうして、ポツダム宣言が発せられる。日本は、国体(天皇制)を護持できるかどうかにこだわっているうちに、東京大空襲、原爆を落とされ、ついにはソ連が参戦して万事休す。満州の引き上げ、沖縄の悲劇。無条件降伏となる。
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そうして、連合国(アメリカ)がやってきて、占領軍として日本を支配した。財閥解体、農地解放、婦人参政権憲法改正、次々と手を打った。
わけても来るべき「米ソの冷戦」をにらみ、共産主義化を恐れて、日本を反共の防波堤にしようとした。そのためにも、天皇制は残したほうがいい。しかし、それでは世界が納得しない。ので、戦争放棄憲法を作った。けれども、朝鮮戦争が起きて、日本の軍備が復活となった。
占領政策の残滓は今も色濃い。日米地位協定は厳然としてある。なにごともアメリカの顔色をうかがう人の政治は、以来、ずっと続いている。