玄関を開けると、かれは寝ている。起き上がれない。肺の後ろから腰にかけて強い痛み。寝返りもできないという。話はできるが、動けない。病院に行くにしても、クルマにも乗れないという。
このままでは、さらに悪化してしまう。その場で、救急車を手配した。きっと入院になるだろう。
近所の人を呼んで、下着やらタオルやら入院の準備をリュックに詰めた。大学で漢文学を教えていた人である。どんな本がいい? と聞くと「荘子」を、と言う。本棚から岩波文庫を3冊、リュックに詰めた。
広大な森で、稲架掛け用のナル(材木)を伐ってもらった帰りのことだ。ふと気がかりになって、山奥の川上集落のMさんを訪ねてみた。先月、訪ねたときに調子が悪そうだった。
さて、入院となると、これからのケアがたいへんだ。かれはひとり暮らし。身寄りは東北だ。