過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

風習やしきたり、世間体や見栄で、大枚をはたくというのも、どうかなあと

初子が生まれるとみんなで祝う。大凧を揚げて、オイショ、オイショと練りをおこなう。ラッパが吹き鳴らされる。夜はきらびやかな御殿屋台がひきまわされる。提灯を手に練り歩く。ラッパが響く。それが浜松まつりだ。200万人近い人出となる。

みんなで祝ってくれるのは、ありがたいこと、嬉しいこと。だけど、いろいろたいへんと聞く。まず大凧をつくる費用がかかる。練りをしてくれた人たちに、酒やつまみ、お菓子を提供する。ということで、聞いた話では50万円、ときには100万円もかかることがあるという。

浜松の北部のほうには、「遠州大念仏」というのがある。初盆の家の前で、念仏踊りを行う。歌の響き、打ち鳴らす太鼓や鐘に哀愁があって、とてもいい風習だと思う。

けれども、これもまたお金がかかると聞く。大念仏をおどってくれる人たちへの接待だ。やはり50万円も100万円もかかることがあるとも聞く。

お金持ちなら、大盤振る舞いして、みんなに喜んでもらえばいいけどね。お金がないと、肩身が狭くなる。あのうちは、初子がいるのに、凧を揚げないんだって。あのうちは、初盆なのに大念仏よばないんだって。

そう言われたくないので、無理をしてお金を工面して、いわつてもらう。供養してもらう。そうやって、風習やしきたり、世間体や見栄で、大枚をはたくというのも、どうかなあと思ったりする。

豪勢にお金をかけずに、簡素に心のこもったものに。みんなで力を合わせて、祝ったり祈ったりできる世界がほしいところだ。

この山里の熊切地区という集落の和尚から聞いた話。このあたりでは、初子が生まれると、集落のみんなで手作りの凧を作る。それを一日かけて、凧揚げするんだよ。お金はほとんどかからない。

葬儀もお寺が祭壇もっていて、それを無料で貸し出す。むかしは葬儀社などつかわないで、村のみんなが共同して葬儀を行った。ほとんどお金はかからなかった。そう言っていた。