過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

滝を浴びていたらランがいない

滝を浴びるのは気持ちがいい。頭からドドドーと水圧がきて、シャキーンと冴えわたる。邪気を払い落としてくれるような気がする。しかし、そんな滝はなかなか近くにはない▲朝、ランの散歩をしている時、人工的な滝だけど、ここで浴びたいと思った。水量はちょうどいい。だれもいない山の奥だ。ランを近くの木に縛りつけて、パンツ一つになって滝を浴びる。うっひょー、気持ちいい。

しばし、水遊びをしてもどってくると、あれれ、いつの間にかランがいない。どこにもいない。リードを木から外して遊びに行ってしまったんだ。呼べども叫べども、気配がない▲山には動物たちの匂いがする。甲斐犬のランは猟犬なので、本能が目覚めて、俄然スイッチが入る。ガウガウ!と勢いがでてくる。きっと、動物を求めて、遠くまで追いかけていったのだろう▲心配なのは、伸び縮みするリードをつけっぱなしなことだ。木や枝に引っかかったら、身動きができなくなる。しかも、どこの山奥かわからない。そのまま餓死してしまうかもしれないぞ。

しかし、呼べども叫べども、いっこうに気配がない。ますます心配。あいにくホイッスルも持っていない。通りすがりの人に、犬が山奥に行ってしまって困ってますと、伝えておいた▲ホイッスルを家まで取りに行って、また山奥に探しに戻る。吹いても、ほとんど気配はない。滝の音に消されて音が聞こえないのかもしれない。これは、ますます心配だ。

──まてよ、もしかしたら、いつもの田んぼの近くでウロウロしているかもしれない▲田んぼにもどると、さきほどの人が、「さっきあちらで吠えていたよ」と教えてくれた▲ガードレールにリードが引っかかって、そこにランがいた。だれかが捕まえて、固定してくれたのだろうか。ぼくを見ると、ランは嬉しそうに飛び跳ねている。やれやれ、これで一安心。そんな朝の騒動だった。