過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

お茶がふるわないのはどうしてか

この山里の主な産業は林業とお茶だ。あたりの風景は、ほとんど杉ヒノキの森とお茶畑。しかし、ともにふるわない▲林業は、木を伐るたびに赤字が出る。森は放置されたまま。お茶は、手間をかけて育て製茶しても、これも赤字に近い。ということで、後継者もいないし、お茶畑も放置されていく。

お茶がふるわないのは、まずペットボトル茶の普及がある。テレビで総理大臣の諮問委員会の様子などを見ていると、出されるお茶がペットボトルだ。ちゃんとしたお茶を出すのは手間がかかるし、なにより女性差別だ、などという論議もあるのだろう▲そして、若い人達は急須に入れたお茶を呑まない。コンビニで弁当を買ってペットボトルのお茶というスタイルが広がる。お茶よりもコーヒーがいいという。わがやに訪問客があって、お茶がいい? コーヒー? と聞くと、だいたいコーヒーがいいという。

お茶のいれ方を知らないということも大きい。お茶はいれ方によってずいぶんと味が違う。ぼくもちゃんとして入れ方を知らなかった。茶葉を入れた急須に熱い湯を注げばいいと思っていた。それだと、どんな高級な新茶でも苦い味になってしまう▲おいしいお茶にするには、まずは量の配分。お湯の温度は60〜80℃くらい、待つのは深蒸し茶なら30秒から1分、普通煎茶で 1、2分。すこしづつお湯呑みに注ぐ。最後の一滴まで。深蒸しかどうかでもちがう、番茶やほうじ茶はまたちがう。……というあたりのコツをつかむのが難しい。こうした入れ方を習得しないと、お茶の味わいがわからない。

ということで、お茶で暮らしていくのは難しいと、地元の人達は言う。しかし、きのう書いたが、大脇さんのように一人で120キロものお茶を、しかも150グラム1800円という高額で完売できる人もいる▲Facebookで無農薬・無肥料のお茶を栽培している梅沢さんのことを書いたら、即座に問い合わせが来たりもした。紅茶にして売れ始めた人もいる。またある人は、すこしずつ味わいが違うお茶をセットにしたら売れ始めたということも聞いた▲売り方のこと、広報のこと、いろいろと工夫すれば道は開けないことはないだろうけど。