過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

コブラ使いと女乞食。インドのプシュカール。

 

インドって、どんなところがおもしろい?
そう聞かれるが、たくさんありすぎて、選べない。

友人が訪ねてきたので、こんな話をした。
ちょうど暑い日だったので、思い出した。
そうそう、ものすごく炎天下でコブラ使いを見た話だ。
  ▽
四月の半ば、西インドの砂漠地方、プシュカールという町を旅していた。
気温は50度近くにもなって、日中はほとんど歩けない。10メートルも歩くと倒れそう。車に乗っていて窓を開けるとたいへん。巨大なドライヤーで熱風を吹きつけられるかのようだ。

ただ、湿気はないので木陰は涼しい。
アラブ人たちの衣装のよさがよくわかる。男性は頭をおおい、首から足 まである長袖の「トーブ」と呼ばれる服。トーブは猛烈な日差しと暑さに見舞われる砂漠の気候に適した服装だとわかった。
  ▽
そんな町の昼下がり。
筵に座ったコブラ使いが、笛を吹いてコブラの踊りを見せていた。

へえーっと感心して観察していると、どうも、コブラは笛の音色で踊っているのではない。

コブラ使いは、袋の中にコブラをしまい込んでいる。
むこうから客がやって来そうだというと、袋の中のコブラの頭をひっぱたく。コブラは怒って鎌首を持ち上げ頭を膨らませて、威嚇のポーズをとる。その時に合わせて、笛を吹く。

なあんだ。コブラは笛の音で踊るんじゃなくて、頭をはたかれてムカッときているだけなのだ。

客が寄りつかないと、またコブラは袋の中に入れられる。また客が通る。コブラは頭をひっぱたかれる。

そんなことが繰り返されていた。よく見ていると、10分おきにひっぱたかれている。コブラ君は、袋の中で熱いだろうし、外に出れば頭を叩かれる。

「おもしろうてやがてかなしきコブラかな」
  ▽
そのちかくで、盲目の女乞食が炎天下に坐っている。
缶詰の箱に小銭が入っている。
足音を聞いて、ババー、ババー(だんなさまぁ)。
ガシャガシャ。小銭の入った入った缶の音をさせる。

コブラ使いと女乞食。

そうして、石畳を歩いていくと、サーランギという弦楽器を弾いて歌っている吟遊詩人の声が聞こえた。