過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

「負けた方が勝つ」というロジック

「おとうちゃん。シンケンダンシャクやろう」
──ん。うむむ。やろうか。
 
シンケンダンシャクは、真剣男爵と聞こえる。おもしろいね。
お母ちゃんが言う。
「ちゃんとした名前を教えないと、幼稚園でバカにされるから」
 
──そうだね。あのね、シンケンダンシャクじゃなくて、シンケイスイジャク(神経衰弱)っていうんだよ。
 
「シンケイダンシャク、シンケイスシジャク……」
 
言いにくそうだ。でも、とにかく始める。
トランプのカードを裏返して、同じ数字を当てるゲームだ。
 
先月までは、おとうちゃんが圧倒的に強かったが、ここのところあかりに負けるケースが増えてきた。
 
それでも真剣にやると、やはりおとうちゃんが勝つ。
あかりは悔しくてならない。
「負けた方が勝ちっていうゲームなの」と、負けたのに勝ちを一方的に宣言する。
 
──なるほどそうきたか。
でもね、「負けた方が勝つ」というロジックでいくと「勝ったほうが負け」となるでしょう。そうしたら、「負け」。すると、「負けたほうが勝つ」ということで、やっぱりおとうちゃんは勝ったことになるんだよ。
 
「だめー。やっぱりあかりちゃんが勝ちなの」
──じゃあ、もう一回やろうか。
 
まぁ、そんな無茶苦茶なやりとりを楽しめるようになってきた。