過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

むかしは、藤(とう)で作った乳母車だった

あかりをよくリヤカーにのせて、散歩する。今夜は三日月と金星を見ようねと言っている。

ところで、むかしは、藤(とう)で作った乳母車だった。近所にまだこの乳母車を保存しているうちがあったので撮影した。幼い頃、乗ったおぼえがある。

ごろごろごろ、がたんがたんがたん。その感触、振動を覚えている。三好達治のこの詩を思い出した。

「乳母車」

母よ――

淡くかなしきもののふるなり

紫陽花(あじさい)いろのもののふるなり

はてしなき並樹のかげを

そうそうと風のふくなり

時はたそがれ

母よ 私の乳母車(うばぐるま)を押せ

泣きぬれる夕陽にむかって

轔轔(りんりん)と私の乳母車を押せ

赤い総(ふさ)のある天鵞絨(びろうど)の帽子を

つめたき額にかむらせよ

旅いそぐ鳥の列にも

季節は空を渡るなり

淡くかなしきもののふ

紫陽花いろのもののふる道

母よ 私は知っている

この道は遠く遠くはてしない道

f:id:ichirindo:20181202155111j:plain