こんなステキな乳母車をいただいた。この籐製の乳母車のなんとなつかしいこと。味わい深いこと。
あかりは、もう乳母車に乗る年齢ではないが、ゴロゴロと走らせてみた。
三好達治の「乳母車」という詩を思い出す。
母よ――
淡くかなしきもののふるなり
紫陽花(あぢさゐ) いろのもののふるなり
はてしなき並樹のかげを
そうそうと風のふくなり
時はたそがれ
母よ 私の乳母車を押せ
泣きぬれる夕陽にむかつて
轔々(りんりん)と私の乳母車を押せ
赤い 総(ふさ) ある 天鵞絨(びろおど) の帽子を
つめたき 額(ひたひ) にかむらせよ
旅いそぐ鳥の列にも
季節は空を渡るなり
淡くかなしきもののふる
紫陽花いろのもののふる道
母よ 私は知つてゐる
この道は遠く遠くはてしない道