過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

山道を間違えてフライトに間に合わない……

秋田への取材は、じつは出発から、えらいことになっていた。羽田発9時15分の飛行機に間にあうためには、朝の5時に家を出なくちゃいけない。掛川駅までクルマ。そして、新幹線とモノレールだ。掛川駅まではいつもの道なので、余裕で出かけた。

山道は真っ暗。いつものようにスイスイと飛ばす。しかし、あれれ? いつまでたっても、となり町につかない。おかしい、おかしい。こんなにたくさんトンネルってあったかなあ。もうすこし飛ばしてみよう。でも、へんだなあ。へんだなあ。やがて、崖づたいの道に入ってしまう。これは明らかにおかしい。

考えられないことだが、道を間違えたらしい。でも、どうして? 

……そうか、朝早くて真っ暗だ。信号の点滅もなかったので、右折しなかったんだろう。それで、いつの間にか川根町の山奥のほうに行ってしまったのだ。

慌ててUターン。焦る、焦る。間に合うか。飛ばす、飛ばす。……しかし、着いたときには新幹線はすでに出発していた。

あの新幹線を逃したら、もう飛行機に間にあわない。だめだ。ガクッ。大失点。出版社の編集者とカメラマンが行くのに、肝心のライターのぼくが間にあわないのは、えらいことだ。

いまから予定を変更してもらおうか。いやあ、無理だろう。じゃあ、なんとか、夕方のフライトで行って、無理に取材をお願いするか。それもむつかしいだろう。もう、ごめんなさいするか。そうなったら、もう信用はなくなる。

さあ、どうしよう。どうしよう。なかば諦めつつあった。

が、まてよ、もしかしたら、間にあうかもしれないじゃないか。だいたいフライトだって遅れることもある。

妻に電話。子どもと眠っているはずの妻が、さいわいすぐに出た。さっそく調べてもらうと、ギリギリ、フライトの10分前に辿り着くコースがあった。これは間にあうかもしれない。

その選択にかけてみることにした。遅れて新幹線に乗り、静岡でひかり号に乗り換え。品川から浜松町だ。ホームを走る、走る。そしてモノレール。

……とついに、20分前に辿り着いた。しかも、フライトは5分遅れだった。ネットで予約してあったので、バーコードですんなり通過。ということで、無事に秋田にフライトできたのだった。

うわぁどうしよう……と、こんなに焦ったのも、久しぶりのことだ。でも、諦めないでよかった。諦めてしまえば、せっかくの可能性は閉じてしまう。

かすかな光があれば、その可能性に賭けてみると、なんとかなる。いや、なんとかならなくても、とにかくなんとかなるんだ。そんな貴重な体験であった。それにしても、時間の余裕をもって行動しないと、いけない。ぼくは慌てると、いつも失敗してしまうのだ。