過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

山里での「なりわい」を開拓していった人たち

山里では仕事がない。畑を耕し田んぼをやれば、自給自足の道もある。空き家を借りればタダ同然。生活費はやすい。環境もいい▲けれども、どうやって現金収入を稼ぐ。会社がない。仕事がない。貯えがないと暮らしていけない。そういう心配がある▲まあ、ひとり暮らしなら、なんとかなるかもしれないけど。家族がいたら、子どもがいたら、それはお金がかかる。

会社員として、きめられた時間に会社に行って、イヤな上司がいても我慢して、悪口言われても窓際になってもじっと耐えて、きめられた時間を会社で過ごす。でも、その対価として、ちゃんと給与が支払われる。そういう生き方もある。「安定」しているけど自由がない、創造性がない、ワクワクしないかな▲その生き方をやめて、「自由」であろうとすると、もう「安定」がない。先行き不安でどん詰まり感がでてくる。ああ、やっぱり会社員に戻ろうか、ということになる▲山里に暮らすとなると、会社員という選択は、もはやない。そもそも会社がないからね。あっても、やとってくれるわけじゃない。だから、自営業というか自由業の道。

そういうなかで、工夫して生計の道をちゃんとつくっている人たちもいる▲独学でそば打ちを習って、山奥なのに年間2千人ものお客のある十割そば屋さん。川原の石に猫を描いてクラフトフェアや個展で販売している工房。塾を開き有機茶を栽培している新規就農の夫婦。バブル期に建てられて不振になったハコモノの施設を買って、オートキャンプ場として来客ひっきりなしにした人。街道のトンネルの前にブースを作って喫茶店を営む人▲廃材をもらって自前で家を建てて木工のアクセサリーを販売して子育てしている人。目の悪い奥さんを大切にして、針金細工のアートを販売している人▲じつにさまざまな人たちがいる。みんなぼくの友人たちだ。創意と工夫と努力とコミュニケーションのチカラ。みんなすごい。迫力がある。リアリティがある。

そういう人たちの話を聞くのは、とてもおもしろい。こうして山里での「なりわい」を開拓していった人たち、あるいは、いま奮闘中の人たちのトークイベントを、まちなかやってみたいと思っている。