過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

やっぱりヤマザクラがいい  吉野のサクラは千本塔婆という説も

じつは、サクラが苦手だ。一斉に開花するソメイヨシノが。なにしろ派手やかに見事に、一斉に咲く。どうだ、めでたいだろう!という晴れやかさ。で、いつも、ぼく自身はちっとも晴れやかな心境じゃないので、そぐわないなあと感じている。みんなが出かけていって、大騒ぎするのも落ち着かないし。

いまはもう、そういうサクラが散って、さわやかな若葉がでてきて、落ち着いていられる。で、サクラでいいのは、やっぱりヤマザクラ。一斉に咲いてなくていい。ひっそりと山奥でどおーーんと一本だけ咲いているのがいい。山を歩いて、そんなヤマザクラに出あえるのが、とってもしあわせなこと。

サクラといえば、やっぱり吉野か。吉野千本桜。あのサクラは、ほんらいはみんなヤマザクラだったという。修験道をひらいた役行者(えんのぎょうじゃ)が、みずから感得した蔵王権現ヤマザクラの樹に刻んだのがはじめとされる。

で、あの千本桜は、千本塔婆(とうば)という説もある。すなわち、亡くなった人の鎮魂のために、植えられたというのだ。ひとつ一つのサクラが鎮魂・慰霊として開花する。吉野を愛した西行の「願わくば 花の下にて 春死なん 」という歌とあわせて、そうかもしれないなあと思う。