過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

「死を待つ人の家」を訪ねて(1)

インドのカルカッタを旅していたとき、カーリー寺院を訪ねた。早朝、人力車に乗って出かけると、境内はものすごい人の群れでごったがえり、熱っぽいエネルギーで充満している。

カーリー神は、黒い肌に赤い舌を出し頭蓋骨の首飾り。血糊のついた剣や槍、髑髏のついた棒、血の滴る生首を携えている。破壊と殺戮を楽しむ暗黒の女神といった形相だ。

その女神に捧げるために、毎朝、羊が犠牲となる。まさに仔羊が三頭、これから犠牲になるところに出くわした。哀れ仔羊たちは、毛むくじゃらな大男に首を束ねられ、万力のような機械に固定された。足を引っ張られると、ぐーっと首が伸びる。その首に、巨大な刀が振り落とされた。

ズン。瞬時に首と胴体が離れる。頭が地面に転がる。血が一気にあふれ出る。胴体から離れた羊の口がぱくぱくと動く。足もぴくぴくと。血の臭いを嗅ぎつけて、カラスがやってくる。痩せこけた野良犬がきて地面の血をピチャピチャとなめている。

ところで、マザーテレサの「死を待つ人の家」は、この寺院の境内にある。戸外で死にそうになっている人が担ぎこまれ、その最期が看とられる。さぞやキリスト教的な静寂な雰囲気と思っていたが、羊の首を切る場所のすぐ近くとは驚いた。マザーがカルカッタで活動を開始したとき、ようやくこの場所を貸してもらえたのだった。