過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

甲野善紀 取材秘話

(続き)立ち話をした時、「触ってご覧」と身体を見せてくれた。
なにしろ100キロもの猛者を投げ飛ばすわけで、さぞやすごい腕っぷしではと思った。
腕を見せて「さわってごらん」という。
さわらせてもらうと、ふにゃふにゃだ。肉が揺れるほど。感触では、まるでマシュマロのようだった。
 ▽
「じゃあ、ハラに腕をいれてごらん」
腕でハラを突いてみた。
すると、なんと、ずぶずぶずぶとめり込んでゆくではないか。
そして、とてもやわらかい。温かい。

この体験は神体験であった。
───こんな人がいるのか。こんな身体があるのか。そんな柔らかい身体で、100キロ以上の人を軽々と持ち上げ投げ飛ばすことができるのか。

当時は、NHKでシリーズで放映されたりして、売れっ子時代。
あちこちで取材依頼があって、忙しくてたまらない様子。

それ以前は、いつも羽織袴で日本等を携え、下駄で歩いているアヤしげなおやじ。
それが、一躍、ものすごい人気者となったわけだ。
  ▽
こうなると、取材もむつかしい。
たまたま、一橋大で実習と講演があったときにお会いした。
話そのものはボソボソと喋っていて、「うーん、これはつまらないかも」と思った。
しかし、実演になると突然の輝きが炸裂。

壇上に希望者を次々と読んでは、投げ飛ばす。
100キロ以上の猛者たちも軽々と持ち上げけ投げ飛ばされる。
河野さんは、見た目は60キロ以下の体格。まったくマッチョではない。細いほうだ。
持ち上げる、投げ飛ばす、瞬時に移動する。交わすという実演してくれた。
実演しながらの話はたいそう面白いものだった。
 ▽
その講演と実演が終わって帰るという時、甲野さんに追いついて、インタビューの依頼をお願いした。
その時、佼成出版社の絵本のなんとかいうのがほしいといわれた(立正佼成会の雑誌の取材だったので)。
絵本はすぐに手配して送った。
それでまあ、なんとか恩義を感じていただのか、取材を受けてもらうということになったのだった。(続く)