過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

95歳と94歳のお二人で、支え合って暮らしておられた

95歳と94歳のお二人で、支え合って暮らしておられた。
しかも、たいへんな山奥、家の前は急峻な坂道。そんな夫婦を取材させてもらった。
長男の奥様はインドの方で友人だ(3枚目の写真)。いつもインド哲学と仏教の話をしていた。そのご縁だった。
病院などにほとんど厄介になることもなく、なんの不足もなく、たんたんと野菜を作り自給自足的に満ち足りて暮らしておられた。大根を引っこ抜いて「ほら、もってけ」といただいたりした。
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お二人から、いろいろと聞いてお話をまとめていこうとした。しかし、その矢先、2ヶ月後、ご主人が亡くなった。そうして、翌年の3月に奥様が亡くなった。
 こんなに突然亡くなるとは思っていなかった。
取材原稿はすすまなくなった。
四十九日の前に、長男と長女が集まるというので、またお訪ねした。
いろいろな苦労談、逸話をお聞きした。
急峻な山と坂道、車とてない。子育ても買い物も、たいへんなことだったろう。
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その家は、まことに居心地がいい。家のなかに「気」がよく流れていた。安心感、くつろぎ感があった。
深い山の中だから、人の気配はまったくない。風の音、木のそよぎ、鳥の声。
この空気感。気の清涼さ。それが、お二人が元気で暮らしてきた大きな要因だったのかなあと感じた。
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庭には、遺品などを片付けてあった。 もうすっかり必要ないものは焼却処分するという。
「あれ? お坊さんの書がある」
みれば興宗とある。
うむむ。興宗といえば、板橋禅師。そういえば、この山里のお寺の晋山式にこられたという話は聞いたことがある。
板橋興宗さんの書に間違いない。
「この書は、燃やしたりしたらもったいないですよ」
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「すごい90代」の本を届けにおたずねすると、「うちにあっても、まったく価値がわからないし。猫に小判だから、池谷さんにもらっていただきたい」。ということで、いただいてきた。(板橋禅師の話に続く)