過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

こういう鉄人のような宝のようなお年寄りが

「玉ねぎ、もっていくかぁ」。いつも遠慮しないでよろこんでいただく。この方が育てた野菜は、どれをとっても立派で美しい。数年前までは、有機茶も栽培し、シイタケもたくさんつくっていた。何十キロもある椎茸の原木を軽々と担いでいた。

あかりを肩車しての朝の散歩のとき、畑でお会いした。宮脇眞一さん。ことし90歳になる。体はがっしりと頑丈。すべて自分の歯だ。26本もあるという。ビール瓶の蓋を歯で抜くことができる。

8歳のときから、日記を一日も欠かさずにつけている。戦時中は、志願して兵隊に行った。トイレに入って、かすかな明かりで隠れて日記をつけていたという。そして、その日記は、ちゃんとすべて保存してある。

古文書も読める。詩吟もうたう。しばらく前まで、老人会の会長をされていた。また数年前まで、認知症になった奥さんの介護を何年もされていた。食事から下の世話まで。「そんなことはなんでもない」と笑う。奥さんは、いまはちかくの介護施設にいる。

この山里には、こういう鉄人のような宝のようなお年寄りが、たくさんおられる。