過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

イノシシの丸焼きの集い

「ついにイノシシが手に入った。これから、皮を剥いで血抜きをするよ」
──おお、やりましたね。これから見に行きます。あ、そしたら渋柿をもらいに行っていいですか。
ということで、とれたイノシシを見て、柿の木から渋柿を100個くらいもらってきた。
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尾上さん(70歳)からの連絡だった。彼は、銀座のフランス料理の最高峰、マキシム・ド・パリで15年間修行した。それから、日本各地のホテルなどで料理長をしてきた。本格的な料理人を40年以上されてきた方だ。
お母さんの取材の過程で出会った。お母さんは、今月で100歳。いまでも日用品の雑貨店を経営している。仕入れから対面販売、レジ打ちからすべて行っている(写真は尾上さんとお母さん)。10月に上梓した「過疎の山里にいる普通なのに普通じゃないすごい90代」(すばる舎)に書かせてもらった。
明るく気さくな人で、やりとりもポンポンとスピーディ。「おもしろいからやってみよう」という感じで動いてくれる。
地元の春野町に帰ったのは11年前。ぼくも同時期に東京から移住した。浜松グランドホテルにもいたし、国立にも暮らしていたというので、ぼくの人生とかなりかぶっている時期がある。
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こんど「イノシシの丸焼きをする会」をやろうということになっていた。だが、いつイノシシが手に入るか。それによって日程がきまる。
そして、ついにイノシシが手に入った。皮を剥いで、血を抜いた。あとは16℃くらいで熟成させる。その段取りでいうと、11月26日あたりの集いとなるか。
前回は、ニワトリを解体して料理する集いに、52名の親子が集った。7月の暑い中、子どもたちは水遊びをしたり、走り回って遊んだ。
こんどは大物のイノシシの丸焼きだ。きっとおもしろい。ただ参加人数が多いと交流はむつかしくなる。せめて20名くらいかな。
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イノシシは、作物を荒らすので獣害駆除の対象になっている。猟銃や罠にかけて仕留める。檻にかかったイノシシは高圧電流で殺す。
獣害駆除には奨励金が出る(自治体によって6,000~15,000円)。漁師は駆除の証拠として、イノシシのしっぽを切って行政に出す。だがイノシシの肉自体は、解体して保存するのも手間なので、土に埋めてしまうことが多い。隣町では年間100頭くらい土に埋められているとも聞く。それは、なんとももったいない。
また、せっかく命あるものを殺すのだから、ありがたくいただくほうがいい。そんなことで、せっかくフランス料理のプロがいるのだから、料理を教えてもらって交流しようということになったわけだ。
新鮮なイノシシ。ワザを持ったフランス料理のプロ。丸焼きができる場がある(うちだけど)。貴重な体験の一日となるなぁ。
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大人も子どもも、どのようにして食べ物ができるのか、体験として知らない。主食のお米などは、種籾から苗床、代掻き、田植え、草とり、収穫、稲架掛け、脱穀から籾摺り、精米という過程がある。体験したことある人はほとんどいない。ぼくは、さいわい山里に移住してそういう体験ができた。
かけがえのない「食」。それがつくられる過程をじかに学ぶべる機会。しかも、食糧危機を迎えつつあるこれから、サバイバルの必須のワザだ。