あかりが、アリを見て言った。
──これなぁに?
──ありさんだよ。
──こわいの。
──こわくないよ。大丈夫だよ。
──悪いネズミはこわいの。(これは、絵本に出てくるネズミのこと)
──こわいよ。あ、でもこわくない。(想像のネズミは、すごくこわい。しかしそれは、ネズミの影だったという絵本)
──グラッファローはこわいの。(グラッファローという、森にいる怪物のこと。しかし実際はこわくない。これも絵本)
──こわいよ。でも、こわくない。
──みーんな大丈夫だよ。
──じゃあ、なにがこわいの。
──こわいものなんか、ないんだよ。
──おかあちゃんも、おとうちゃんがついているからね。大丈夫。
──じゃあ、こわっいてなぁに?
──さあ、なんだろうねぇ。
実際は、こわくないのに、こわく見せようとして、なにか細工している。実際は大したことはない。
あるいは、自分のイメージがこわいものを作り上げている。自分が作ったイメージに縛られてしまう。
まあ、人生の不安、恐れ、懸念、心配、焦りなど、そういうものかもしれない。
自分が怖い怖い、とイメージをつくりあげている。
実際に、突き進んでみると、やりとりしてみると、なあんだ、たいしたことないじゃん、ということがよくある。
しかしまあ、不安、恐れに支配されて日々生きているようなことが多い。