過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

リヤカーに乗せてひとまわり

あかりが外に出たいという。炎天下だ。歩くのをいやがる。帽子かぶせてリヤカーに乗せてひとまわり。ちょっと散歩のつもりが、ひとり暮らしのおばあさんの家々を訪ねることにした。みなさん80を超えている。

Mさんは留守だった。昨年、ひとり娘を亡くされ、身寄りもちかくにいない。先月、ご主人が家で倒れて救急車に運ばれた。退院するとちかくのデイサービスに入ったという。ご主人の介護に出かけているのだろう。この年になって次々と試練が襲ってくるよと言っておられた。

Aさんを訪ねる。あがんなさいというので、遠慮なく。甘いものが好きな方で、ぼくもそうだ。あかりにと、冷えた桃をむいてくれた。ケーキのモンブランハーゲンダッツ、たくさんのアイスクリームがテーブルに並んだ。おいしいお茶を飲みながら、よもやま話し。

そこに突然、お坊さんが入ってこられた。あれれ、知り合いだよ。昨年、禅宗の研修会の講師に呼ばれてお話させてもらったとき、お会いしたのだった。お互いに、どうしてここに? あっそうか。いまはお盆なので、お坊さんは檀家参りをしている最中なのだった。お坊さんは、この家でアイスクリームを食べているのが、あのときの講師だとは思ってもいない。

あかりを膝に乗せて、一緒にお経に参加。禅宗の供養のお経の中身の半分は、真言なんだ。あんぼきゃべいろしゃのう まかぼだら まに はんどま じんばら はりばらたや うん。おんさらば たたぎゃた はんなまん のうきゃろみ。光明真言に普礼真言。ちょっと真言宗みたいだ。

近頃のお坊さん事情を色々お聞きした。となり町の本山の次の住職はだれに。老朽化しているので、改修に2億も、3億もかかるとか。先代の住職の本葬儀もある。晋山式もしなくちゃいけない。これまた何千万円。しかし、檀家は40数軒しかいない。となると、ほとんど新任住職の持ち出し。すごいお金もちだねえ。しかし、歴史ある大本山だから、名誉あることだし……。

つぎに、Mさんをたずねる。42で夫を病で亡くして、4人の子を育ててこられた。暮らしも簡素で、いつも整頓されていて清潔。さながら僧堂みたいだといつも感じる。

そこへNさんが訪ねてきた。この方もひとり暮らしの70代。畑のさつまいもが、今朝、みんなイノシシに食べられてしまった。いまお坊さんが来られたので、あなたの家にそろそろ来られるよ。そんな話をしにきたのだった。

Mさんの家は、坂の上にある。みなさんお友だちは、足腰が弱って訪ねてこられない。こちらから出向くのもたいん。近頃、オレオレ詐欺があったので、電話番号を変えてしまったので、友だちと話をすることもなくなった。またきてね、あかりちゃんと会うの楽しみにしている。そんなことを話して、別れたのだった。