【校庭に響くプレスリー】2026.4.30
今朝の「ラジオ深夜便」で宇崎竜童のインタビューを聴いた。作曲家として原点が、この一場面に凝縮されているような話。
1950年代。姉たちが思春期を迎えた頃だった。FEN(米軍放送)ばかり聞いている。その横で僕も付き合って聞いていた。小学校3年のときだった。
ある時、朝礼で生活指導の先生が「流行歌を歌ってはいけない」という話をした。そういう時代だった。
でも僕は流行歌なんか聴いてないので、関係ない。
そしてエルビス·プレスリーの「ハートブレイク・ホテル」を口ずさんでいた。それを聞いた同級生が先生にチクったようだ。
職員室に呼ばれて叱られた。
言うことを聞かない悪ガキだという風に先生は思ったようだ。
僕はそれを聞いて、「先生、あれは流行歌ではありません。ロックンロールです」って言った。
さらに叱られたという話を後で母親から聞いた。
ところが担任の先生は、20代をちょっと超えた……師範学校を卒業したての先生だった。
「木村くん、こないだ叱られたね。あの曲、持ってる?」
「先生、聴きたいな」って言う。
「僕は持ってませんけど、姉がレコードを持ってます」。
「先生、聴きたいな」
そう言うので、走って家に帰ってレコードを持ってきた。
先生はそれを手回し蓄音機に乗せた。針を置いた。校庭のスピーカーから音が流れ出した。
その日は土曜日の宿直だった。
誰もいない校庭。
先生と僕だけがスピーカーから流れる「ハートブレイク・ホテル」を聴いていた。