【③魅惑のインド:マザーの「死を待つ人の家」】2025.11.19
カルカッタ(現コルカタ)は、インドの東の玄関で、人口は千四百万を超す大都市だ。ところが、当時(1990年)はホームレスは二百万人とも三百万人ともいわれていた。
通りを歩いていると、道端で寝ている者は数知れず。貧しさゆえに医療も受けられず放置されたり、食を得られず体力も失い、道端で死を迎える者たちがいる。
道端で生まれ、道端で死んでいく。
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カルカッタでは、路上に倒れている人を見るのは驚くことではない。倒れて動かない者がいたら、蹴っ飛ばされる。動かないのは瀕死の者なので、マザーの施設に連れて行かれるとも聞いた。
施設は、男女に分かれて百ほどのベッドがあり、息も絶え絶えの病人たちが毛布に包まれて横たわっている。仕切りもなく、野戦病院のような光景だ。
各国のボランティアの青年が奉仕活動をしていた。老人を抱きかかえながらミルクを与えている。体を拭いている。シーツを洗濯している。下の世話をしている。
栄養失調、結核、マラリア、ハンセン病など、さまざまな理由で瀕死の状態になって担ぎ込まれてくる。壁には、伝染病で亡くなったシスターの写真が貼ってあった。まさに、我が身を顧みない体当たりの奉仕だ。私には、とてもできないことだと感じた。
こうしてインドの旅は、宗教・文化・生死の現実が重なり合う“生の濃さ”に出会うものとなっていった。これは35年前、はじめてカルカッタを旅した時の体験である。(次号)