【①魅惑のインド:割礼の儀式】2025.11.14
ライトに照らされ、男の子と長いひげを生やした80歳くらいの老人の姿が見える。
男の子は3歳くらいだ。下半身は裸で、大人たちに両足をつかまれ、性器を露出している。泣き叫んでいる。
その前に立つ老人は、イスラム教の聖職者のような服装をしている。手には竹製のナイフを持っている。
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夕方、カルカッタの路地を歩いていると、大富豪の家を見つけた。門には飾り立てられた馬が二頭つながれていた。
中では宴会が催されており、賑やかだった。
私は構わずんずんずんと中に入っていった。男たちが何百人も集まっている。服装から、どうやらイスラム教徒たちのようだ。外国人の訪問者は珍しいのだろう。「一番前にどうぞ」と案内された。
横の小屋には、着飾った10歳未満の女子たち数名が隔離されていた。すこしおびえたような表情をしている。
いったい何をしているのか、どんな儀式なのか、最初はわからなかった。
途中で気がついた。「これは割礼」(かつれい)の儀式ではないか」と。男の子は、この富豪の息子なのだろう。
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割礼とは、ペニスの包皮を切る、神との契約の儀式だ。イスラム教徒もユダヤ教徒と同様、幼い頃に割礼を行う。
ユダヤ教、イスラム教などで古くから行われる伝統だ。預言者イブラーヒーム(アブラハム)の教えに従う清めの行為であり、共同体に属する一員となる証と見なされる。
しかし、いくら何でも竹のナイフとは痛そうだ。男の子は恐怖で泣き叫ぶ。だが、がっちりと抱えられて逃げられない。老人は祈りを捧げながら、包皮を切り取った。
こうして儀式は終わる。「やあめでたい」ということで、会衆は「おおっ!」と祝福の声を上げる。
そのとき、門につながれていた馬が放たれた。
パカパカという蹄の音が闇の中に消えていった。
これがインドのコルコタ(カルカッタ)に入った初日の出来事であった。突然、強烈な異文化に遭遇したわけだ。
インドという大地の“濃密さ”や、多層的な宗教世界に入り込んだのだ。旅の始まりとしては、あまりにも驚愕であった。(次号)