過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

【⑮スマナサーラ長老外伝:1億円の盗難と1億円の浄財】2025.11.14

【⑮スマナサーラ長老外伝:1億円の盗難と1億円の浄財】2025.11.14

こうして対談の半年後、ひろさんの本作りが始まった。

佼成出版社からの刊行で、取材は上野の不忍池近くのホテル「法華クラブ」で行われた。12月だっただろうか。

立正佼成会だから、南無妙法蓮華経について話したい」とひろさんは言った。
私が提案したタイトルは『わたしの南無妙法蓮華経』だった。
佼成出版社は「そのタイトルは立正佼成会としてはダイレクトすぎて、少しどうかな」と逡巡していたが、ひろさんが「それでいこう」と決めてくれた。

「南無」「妙」「法」「蓮華」「経」の5章にわたって語ってもらうことになった。

取材の際、ひろさん、私、出版社の編集長、担当者の4人で夕食をともにした。その席で、ひろさんが驚くべきことを口にした。

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「実は昨日、少しばかりお金を盗まれましてね」
「え、どれくらいですか?」
「1千万円ほどです」
「うわっ、そんな大金! それは大変なことでしたね」

そんなやりとりがあった。ひろさんは特に悔しそうでも残念そうでもなく、平然としていた。
ところが、その日の夕刊を見て驚いた。盗まれたのは「1千万円ほど」ではない。現金で1億7千万円、そして金の延べ棒も含まれていた。

──そんな大金を盗まれたのか。それなのに、あの平然とした態度はすごい。よっぽど大金持ちか、よっぽど心が据わった人なんだな。

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のちに、ひろさん自身が「新潮45」(2001年1月号)で「一億七千万円盗難で考えたこと」を執筆している。

「銀行は信用できない」と現金を預けず自宅に保管していたこと、そのお金はインドの学校建設に匿名で寄付するつもりだった。
当時、ひろさんが仏教界で講演すると、謝礼は100万円ほどだったろう。お寺は当時、振込ではなく現金で謝礼を渡すことが多かった。

私もこれまで数回、お寺で講演を依頼されたが、ほとんど現金で受け取った。
ある宗派の研修では、扇子の上に封筒が乗っていて、それで渡されたこともある。初めての経験だったので、つい扇子ごともらってしまい、お坊さんに「あ、すみません、扇子はお返しください」と言われた。しかも、壇上でのやりとりで恥をかいた(笑)。

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ひろさんは、そうした現金を銀行に預けず、自宅のロッカーに貯めていたのではないか。ひろさんは自宅と事務所を同じマンション内に2つ持ち、私はその両方を訪ねたことがある。

そのため、親しいお坊さんから「池谷さんが怪しい」と冗談で言われたこともあった(笑)。

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さて、ここで不思議なことがある。
スマナサーラ長老が代表役員を務める日本テーラワーダ仏教協会が、それまで借りていた目白のマンションから、新たに幡ヶ谷に土地と建物を購入して拠点にする計画を立てた。

そのための寄付を募ったところ、1億円以上の浄財が集まった。知人の尼さんなどは、1千万円もの寄付をしていた。それがいまのゴータミー精舎だ。

おふたりが対談して半年のことだ。

かたや1億7千万円を盗まれ、かたや1億円以上の浄財が集まるという不思議。(続く)