【④オウム】2025.10.31
ともあれ、オウムと思われてワークショップはやりにくくなったものの、好評だったアフリカンドラムの踊りの集いは継続して企画した。
50人ほどが集まり、ジャンベ(アフリカンドラム)の響きに合わせて自由に踊る。叫んでも構わない。約2時間続けた後、照明を落としてロウソクの灯りの中で瞑想して終わる――そんな内容だ。
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普段は土曜日や日曜日に開催していたが、ある時、「平日なら参加できる人もいるかもしれない」と考え、曜日を変えて開催してみた。
踊り始めて30分ほど経った時、福祉会館の担当者から注意を受けた。
「ドラムの音や踊る足音が響いて、下の階のグループから苦情が出ています。至急、中止していただけませんか」
主催者としては、始まったばかりのイベントを簡単に中止するわけにはいかない。
「え? そうですか。遠方から来た人たちも多いので、中止するわけにはいきません。なんとかなりませんか?」
「無理です。かなりご立腹の様子です」
「承知しました。まずは、下の階で開催されている皆様に直接お詫びと説明をしてまいります」
そう言って、下の階へ向かった。
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まず訪ねたのは、介護研修の会場。
約50名が参加する行政主催のヘルパー研修だったが、「まあ、仕方ありませんね」と寛大な対応をいただいた。
次に訪れた「能面を彫る会」でも、「これくらいなら大丈夫ですよ」と理解を示してくれた。
最後に「手芸の会」を訪れると、10名ほどの女性たちが縫い物に勤しんでいた。代表者の60代後半の女性は、すっかり立腹されている様子だった。
「うるさくてかなわないわ。あなたたち、いったい何なの? オウムなの? 今すぐやめてちょうだい。私なんか、心臓が悪いし、肩も凝って頭が痛いんだから」
「申し訳ございません。肩が凝っていらっしゃるようですね。少しほぐして差し上げます」そう言って、思わず彼女の肩に手を置いた。
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踊っていたせいもあってか、私の手はとても温かくなっていた。彼女はその温かさに驚いたようだ。
「まあ! こんなに温かい手は初めてだわ。ああ、気持ちがいい。少し楽になったわ」
そう言ってくれたので、しばらく肩と背中に手を当て、癒気のようにじんわりと温め続けた。
「素敵だわ。私にもこんな息子がいたら嬉しい。みなさんも、ぜひ手を当ててもらいなさいよ」
そう勧めてくださり、手芸の会の全員の肩と背中に、順番に手を当てさせていただいた。すると、皆さんの機嫌が良くなり、怒りはすっかり消えていった。
最後には「私たちも踊ってみようかしら」という話になるほどであった。
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言葉による説明や論理では解決できないとき、ただ手を当てるという原始的な行為によって解決されていくことを体験した。
「オウムなの?」という非難から始まった関係が、「温かい手」という最も原始的で人間的な触れ合いによって、一瞬で溶ける。「私たちも踊ろうかしら」という共感にまで転換した。言葉では届かないとき、身体が語る。
(続く)