過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

【目で踊り、身体で宇宙を旅する】2025.10.30

【目で踊り、身体で宇宙を旅する】2025.10.30

舞踏家の大野一雄さんが教会に入ってこられた。

教会に掲げられているスウェーデンボルグ肖像画を見ると、いきなりこう言われた。

「おお、スウェーデンボルグ。わたしは、この人の言うことはよくわかる。本当に素晴らしいと思っている。」

そして、「きょうはスウェーデンボルグの描いていた世界、諸天界の宇宙を、神々が踊るというようなことをしてみたい」と言われた。

私は一番前の席だった。

モーツァルトのセレナーデが流れる。大野さんが右袖から出てくる。

「さあ踊るぞ」というとき、その大野さんの目を見て、目の中に展開する大野さんの世界に瞬時に飲み込まれた。見る者を別次元に連れ去る力をもっていた。

大野さんは、惑星と惑星の間を自由に悠々と踊る神々のようなイメージの舞踏を披露してくださった。

「こういう世界があるのか」。私には初めての創作舞踏というものに接した体験であり、まさに、「諸天界の宇宙」から「身体」という内宇宙へと誘うものだった。観客は「見る」のではなく「体験する」のだった。

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30歳の頃、東京の世田谷にある「ホライズンセンター」に通うようになった。東大の心療内科の先生が主催しており、会場は教会だった。

先生はスウェーデンボルグを尊敬しているようで、入り口にはその肖像画がかかっていた。

スウェーデンボルグは18世紀に生きた科学者であり神秘思想家で、30年間にわたり10万の霊と交流したと言われる。人間を一つの器とみなし、そこにさまざまな霊的なものが関わるという考え方を示している。

その人の「支配的な愛は何か」によって、死後、さまざまな霊的な愛の次元に住み分けされると述べている。スウェーデンボルグはカントとも交流があり、ヘレン・ケラー鈴木大拙などに高く評価されていた。

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私が初めて「セラピー」というものに関心を持って体験を重ねた場である。心身の不調を改善し、健康をサポートする施術や療法全般をいう。薬や手術に頼らないアプローチが一般的で、心理療法、物理療法、リラクゼーション目的など多岐にわたる。

そこでは、ゲシュタルト、バイオエナジェティクス、プライマル・スクリーム、気功、センサリー・アウェアネス、サイコサイバネーション、あるいはさまざまな誘導瞑想などを行っていた。

 宗教の世界とは違って、礼拝や儀式など一切なし。自ら体験して自らが気づいていく場である。

サラリーマンで精神世界系のことなどまったく関わりのなかった私は、その場がとても新鮮であった。集まってくる人たちもみな若く、交流も楽しかった。この時代から、おもしろくておもしろくて、次々とセラピーを体験していくことになる。

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あるとき、舞踏の著名な方が来てワークショップを行うということを聞いた。大野一雄さんという。名前だけは知っていたが、舞踏とは何かはさっぱりわからなかった。

踊ってくださった後に、大野さんの語りがあった。私が記憶しているのは、暗黒舞踏創始者である土方巽(ひじかた・たつみ)を大野さんが見舞いに行ったときのことだ。

土方は肝硬変で57歳で亡くなる。遺言は「私の死体は焼くな。腐らせろ」「身体は死んでからが面白い」というものだった。そういう迫力のある方だ。大野さんが見舞いに行くと、土方はもう身体が動けない状態だった。しかし、「指だけで踊っていた」という話をされた。

話は変わるが、このあいだ舞踏をしている友人に言われた。

「池谷さんの身体はもう舞踏ですよ。そのまま舞踏」と。