過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

【⑤スマナサーラ長老の自伝発刊】2025.10.29

【⑤スマナサーラ長老の自伝発刊】2025.10.29
長老との対談のほんの一部です。
〈妄想や思考をやめれば、今の瞬間しかない〉
長老:不死って言葉を聞くと、人はすぐに宗教的に考えちゃうでしょ。でも、仏教は宗教じゃない。
死というのは、物事が変化して流れる中で、流されている状態です。
アッパマーダは、瞬間のことを観察すること。
時間の流れをちょっと止めて、無常が見える。それが涅槃、悟りの境地なんですよ。
過去は幻覚、幻想なんですよ。記憶や概念というものは、存在しないでしょ。なのに、過去に引っかかっちゃう。
アッパマーダは、存在しない過去や未来に行かず、今の瞬間をチェックすること。それにはものすごい集中力が必要なんです。
ヴィパッサナーする時は、まず妄想や思考をやめる。みんなが苦労するのはそこ。
妄想や思考をやめれば、今の瞬間しかない。それで一日でヴィパッサナーは完成するんですよ。
池谷:キーポイントは呼吸ですか?
長老:いや、池谷さんは宗教の色眼鏡で見てるから(笑)。我々には宗教はないんです。
池谷:私はやっぱり、呼吸に気づくことかなって。この病(間質性肺炎)になってつくづく思いました。
〈ヴィパッサナーは生きることに集中すること〉
長老:ヴィパッサナーは「生きることに集中する」んです。
生きることって大きなバスケットでしょ。歩くのも、食べるのも、水を飲むのも生きること。呼吸はその一部でしかない。
水を飲むなら、順番でチェックする。飲みたい気持ちがあって、手が動いて、グラスを取って、口に運んで、飲み込む。パターンが決まってる。飲んでから手を伸ばすなんてありえないでしょ。
人間が間違うのは「結果」という言葉。妄想する人には結果がある。喉が渇いたから水を取って飲んで、OK、結果、って。でも、結果はない。
結果はその場その場で起きる。
手を伸ばす、取る、運ぶ、飲む。それぞれが結果で、次の原因になる。連続するチェーンなんですよ。
人間は妄想でチェーンを作る。どこで切るか?
水を飲むのを結果だと思うと、気にせずガブガブ飲む。でも、チェーンで見ると、伸ばす、取る、運ぶ、飲む、それぞれが結果です。
そのリンク、リンク、リンクです。それがわかると、心が落ち着くんです。
結果を考える人は落ち着かない。結果は未来を今妄想すること。でもそこに保証はないんです。
〈結果を期待すると、困ったことになる〉
チェーンを知ってる人は、結果を期待しない。
過去に引っかかる人はがっかりするけど、期待しないと面白いんですよ。
たとえば、子どもが種を植えてみる。芽が出るかどうかわからないけど、芽が出たら嬉しい。それは、期待してなかったからです。
芽が出てほしいと希望すると、苦しみが生まれる。
行為に結果があるから、期待する必要はないんです。
すべての物事はチェーンでつながっている。「夜になって欲しい」って期待しなくても、流れでそうなる。
年を取ったり病気になったりするのは、期待が裏切られるから困るわけです。健康でいたい、痛みがない状態でいたいって希望するから、病気は不自由で苦しいものとなる。
でも、現実に現実的に当たればいい。私は今、痛み止めのクスリを飲んでいますよ。それが現実です。その時その時に手当てすればいいんです。結果を期待すると、困ったことになる。