②【天命庵】2025.10.28
「あんさんは、いろいろな道を求めて歩み続けて、こうして天命庵にたどり着きましたなあ。
あんさんは、『人をお助けする』──そういう人になりなはれや。
お助けというても、決して難しいことやありまへん。
よう人の気持ちがわかること。
人の気持ちがわかれば、自分の気持ちもわかる。
自分の気持ちがよくわかり、人の気持ちがよくわかるところから言葉を伝えていったら、それがみんな、お助けになります。
安心しなはれや。ずっと見守っています。」
初めて出会ったその瞬間にかけられた言葉が、生涯の公案(枠を突破する教えや問いかけ)になることがある。
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初めて天命庵を訪れたとき、「おやさま」から手を握って声をかけていただいたのが、このお言葉だった。
あれはもう30年前、わたしが42歳のときのことである。
その言葉は、関西弁(大和国山辺郡)の柔らかさと親しみやすさに包まれ、
深い洞察と励ましに満ちていた。
神奈川県湯河原にある天命庵は、大徳寺昭輝(だいとくじ・てるあき)氏の自宅を開放した「心の学び舎」。
毎月8日・18日・28日の「八の日」に開放され、訪れる人々に祈りと語らいの場を提供していた。
特に18日は、参列した一人ひとりの手を握り、深夜に至るまで言葉をかけられていた。
一日に200人ほどは訪れていただろうか。
大徳寺さんが参列者の前で話をしているうちに、ふっと声の調子が変わり、おやさまの言葉になる。
「きょうはごくろうさん」──その瞬間、会場の空気が変わる。
私の身体の力がすっと抜け、深い安心感とやすらぎに包まれる。
これは確かな実感だった。今でもその感覚がよみがえる。
その声の響きは、大和郡山地方の、関西弁のやわらかさ。心の奥底にゆっくり染み込むようであった。単なる教えを超えて、“寄り添う声”と響いてきた。
神かがりとかチャネリングというと、なにか威圧感や神秘性があるのだが、天命庵はむしろ「人のぬくもり」や「日常の優しさ」に根ざしている点がすばらしいと感じた。
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大徳寺昭輝氏は男性であるが、赤い着物をまとい、天理教の教祖・中山みき(おやさま)の言葉を伝えていた。
いわば、霊的なチャネリングである。
文学者・芹沢光治良の作品、特に『神の微笑』の中に登場する「伊藤青年」のモデルとされている。
本名は伊藤幸長(いとう・ゆきなが)。芹沢との交流を通じて、その文学世界にも影響を与えたといわれる。
※天命庵の活動は、天理教の公式な枠組みとは独立している。