【①天命庵】2025.12.28
紅葉の始まりかけた葉に、雨粒が落ちる。
トタン屋根にぽつん、ぽつんと落ちる音。不規則で、どこか優しいリズムだ。
寝転びながら耳を傾けていると、時間がゆっくりと流れ、頭の中のざわつきが静まっていく。
一滴一滴が落ちては広がり、また次の音が続く。
雨の日はうっとおしいものだが、「小さな幸せを感じられる特別な時間だ」と思うことにしている。
エッセイストで視覚障害者の三宮麻由子さんが、「雨の音を聞くのがうれしい」と語っていた。
なぜかといえば、雨の音によって空間の広がりが感じられるからだという。
トタン屋根に落ちる雨音、車に落ちる雨音、地面に落ちる雨音――。
その響きの違いによって、物の位置や風景の広がりが分かるのだそうだ。
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雨音を聞きながら、私は天命庵のおやさまの言葉を思い出していた。
おやさまとは、天理教の開祖・中山みきのことである。
大徳寺昭輝(だいとくじ・てるあき)氏は、そのおやさまの言葉を伝える方だ。天命庵は湯河原にある。
18のつく日は、一般の人におやさまが教えを授けてくださる。
おやさまが大徳寺さんに降りてきて、おやさまの波動で、言葉として伝えてくださるのだ。
おやさまが大徳寺さんに降りたその瞬間、空気がすっと変わる。
自分のからだがほっと楽になる――それは、私が毎回、実際に身体で感じていたことだった。
おやさまは、ひとりひとりの手を取り、その人に応じた言葉を示してくださる。
何百人と訪れるため、話は深夜まで及ぶこともある。
ここでは、そのお言葉をシリーズとして少しずつお伝えしていこうと思う。
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今日は、ゆっくり雨音を聴きながら、自分の心をたずねてみましたか。
あなたがこの庵にご縁をいただき、自然体の深い心を授かって、
今さまざまな活動の中で頑張っているのを、ちゃんと後ろから見守っていますよ。
みんなの心に、温かいものを結んであげてください。
今の人は、とても愛を求めています。とても優しさを求めています。
優しさが、みんなの心から少しずつ欠けているんですね。
だから、これからあなたが人に結ぶものは“優しさ”です。“いたわり”です。
温かい心、温かい言葉、温かい物語を、みんなにつないでいく──それがとても大切なことですよ。
あなたも、私から見れば子どものようなもの。
あなたが立派な仕事をして、うれしい笑顔を見せてくれること、それが喜びですよ。
静かに雨音を聴き、自分の中にある優しさに問いかけながら、
これから一つひとつ、読み物を作っていくんですよ。
これからは“愛”が課題です。
愛をテーマに、素晴らしいものを描いてください。
どんな人にもわかりやすく、何も知らない人にも「いいねえ」と言われるような、
そんな読み物をつないでくださいね。
今日は、ご苦労さま。
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雨の降り続く日に、湯河原の天命庵でお言葉をいただけるのを待っていた。
順番が回ってくると、おやさまは私の手を取り、こうして話してくださった。
あれから、もう三十年も経つ。
※「私の精神史、宗教史」の執筆のためにペースメーカーとして投稿しています。信仰の民俗史みたいな感じになりそうだけれど。