【ベトナムは北伝(大乗)仏教】2025.10.21
ベトナム寺院「天恩寺」を訪ねた。
境内には、石造りの仏像や菩薩像が数多く安置されていた。
この寺は、ベトナム人コミュニティの中心となっており、法要儀式も厳かに行われている。
これまで、農地取得のための役所とのヒアリングや、僧侶招聘のためのビザ申請などでサポートしてきたが、宗教法人取得に向けては、解決すべき課題が山積している。
外国人が異国の地で土地を購入し、建物を建て、宗教法人を取得することは、非常にハードルが高い。
法的な問題に加え、言葉の壁も大きい。
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ところで、ベトナムの仏教は「南伝仏教」と思われがちだが、「北伝(大乗)仏教」に属する。地理的には「南方」に位置するが、仏教的には「北伝」に分類される。
「南伝仏教」と「北伝仏教」を簡単に整理すると以下の通り。
南伝仏教(上座部仏教) 経路: インド→スリランカ→東南アジア大陸部
地域: タイ、ミャンマー、ラオス、カンボジア、スリランカなど
特徴: 初期仏教の教えを色濃く残す。パーリ語経典を用いる。個人の解脱を目指す。
北伝仏教(大乗仏教) 経路: インド→中央アジア→中国→周辺地域
地域: 中国、日本、韓国、ベトナム、台湾など
特徴: 一切衆生の救済を目指す。漢訳経典を用いる。さまざまな宗派が発展。
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なぜ「ベトナムは南方なのに北伝仏教なのか?」
これは、地理的な位置ではなく、仏教が伝来した文化的・歴史的な経路によるものだ。
ベトナムは歴史上、約1000年にわたり中国の支配下にあったため、中国文化の影響を強く受けた。仏教も中国から漢字文化圏の大乗仏教として伝来し、日本や韓国と同じ「北伝仏教」の文化圏に属する。
宗派としては、浄土系や禅宗(臨済系)が盛んである。 天恩寺は浄土系の寺院である。
浄土系や禅宗(臨済系)、さらには儒教や道教の影響が混在する点は、台湾の仏教にも通じる。また、ベトナムの南部では、隣接するカンボジアの影響により、上座部仏教(テーラワーダ:南伝仏教)も共存している。
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ベトナムの寺院で読まれるお経は漢字ではなく、ベトナムの表音文字(クオック・グー)で書かれている。フランス植民地時代に導入されたラテン文字ベースの表音文字「クオック・グー」が普及し、仏教経典もクオック・グーで書かれたものが一般的に使われる。
ベトナム人に混じって法要に参加したことがあるが、なんとか発音できないことはないが、ベトナム語は、6つの声調(トーン)を持つ、声調記号(例:à, á, ạ, ả, ã)がついているが、とても難しい。そして、お経の途中で手と額を床につけて礼拝することが、10回や20回はあったかと思う。