【春野十四秋】2025.6.5
「古代エジプト展」のために久しぶりに静岡市に行くと、浜松との違いを感じる。それは文化力だ。まちなみがどこか格上という感じがする。
駅前を歩いても、個人経営の店が豊富だ。藍染、骨董品、古本屋。そしてデパートもいくつかある。個人経営の店では、店主と話すと味わい深い。個人で経営しているからこその苦労、ドラマ、迫力がある。美術館や図書館も、レベルがはるかに高い。
一方、浜松は、悲しいかな、駅前を歩く気があまりしない。個人経営の店は少なく、マツモトキヨシのようなチェーン店ばかりだ。駐車料金がかかるため、市民は駅前の店よりもイオンに行く。イオンも悪くはないが、店員と話しても、経営者ではないから話を深めようとは思わない。美術館や図書館も、レベルは本当に貧しい。
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とはいえ、縁があって浜松のまちなかに生まれ、57年後に浜松の過疎地に移住して、すでに14年になる。
地元の人から「よくこんなところに移住したね」と言われることが多い。
「たしかになあ……」。地元の人には地元への誇りがあまりない。歴史もよく知らない。つまらないところだと思っているようだ。
「田舎暮らしもいいが、ほどほどの田舎にすればよかった」という後悔もある。「ほどほどの田舎がいい」とは、かつて講演を依頼されて二次会で言われた掛川市長の言葉だった。
すでに土地と家を買ってしまったし、荷物も多すぎるしお金もないので、もはや引っ越すこともできない。だから、移住を考えている人には「ほどほどの田舎」を勧めている。
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① 子育て家庭には、保育園があって保育体制が充実している場所が必須だ。そうでないと、母親の負担が大きい。田舎にパラシュートで移住すると、地縁血縁がないので子育てはとても大変だ。春野町には保育園がないし、子育てサポートも非常に不自由だ。
② 若くて元気なうちはいいが、年を取ったり病気になったりすると、医療体制が充実していないと大変だ。過疎地は特に厳しい。
③ 交通の便も重要だ。駅まで30分以内のエリアが理想。我が家は浜松駅まで1時間半、往復100キロだ。
④ 森があると良い。広葉樹の森が理想だ。春野には森がたくさんあるが、暮らしてみてわかったのは、ほとんどがスギやヒノキの人工林だ。鬱蒼として暗く、生物多様性はほぼない。ヤマビルがいるくらいだ。広葉樹の森があれば、なんとも幸せなのに。人工林はつらい。
⑤ 川があると良い。春野には気田川などの清流がある。カヤックには良いが、泳ぐには急流すぎて危ない。ダムのせいで魚が遡上できないので、魚もほとんどいない。魚がいる川があると良い。
⑥ 温泉があれば良い。温泉は健康に役立つし、人の交流にもつながる。
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ということで、春野町に縁があって東京から移住して14年。いろいろ不便だが、それ以上に素晴らしい人たちに出会い、多くを学んだ。
何より、あかりという娘が生まれたことは大きい。子育てから多くのことを学んでいる。
あれがあればこれがあり、あれがなければこれがない。──すべては因と縁が絡み合って生じている。
あかりには「すべてはあかりが仕組んだことだよ。お父ちゃんとお母ちゃんを選んでこの春野に生まれてきたんだよ」と言う。あかりは「私はそんなこと知らないよ」と答える。
「そりゃそうだ。あかりの背後には大きな神様がいて、あかりを通して動かしているのかもしれない。だから、お父ちゃんはすべてが神様のはからいだと思っているんだよ」と。
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城郭異風韻
市廛別雅俗
書府競高低
客途分栄枯
移栖五十霜
人問但點頭
六要
保医交便
林泉魚遊
湯治健交
中邑為上
春野十四秋
天縁得嬌児
双城並我廬
「よみくだし」
城郭(じょうかく)異(こと)なる風韻(ふういん)
市廛(しせん)雅俗(がぞく)を別(わ)かつ
書府(しょふ)高低(こうてい)を競(きそ)い
客途(かくと)栄枯(えいこ)を分(わ)かつ
移栖(いせい)五十霜(ごじゅうそう)
人問(ひとと)えば但(ただ)點頭(てんとう)す
六要(りくよう)
保医交便(ほいこうべん)
林泉魚遊(りんせんぎょゆう)
湯治健交(とうじけんこう)
中邑(ちゅうゆう)上(じょう)と為(な)す
春野(はるの)十四秋(じゅうししゅう)
天縁(てんえん)嬌児(きょうじ)を得(え)たり
双城(そうじょう)並(なら)び我(わ)が廬(いおり)
「解説」
"城郭"は静岡と浜松を指す
"市廛"は商店街の意
"書府"は図書館・美術館
"客途"は駅前の往来
"移栖"は移住の雅語
"六要"は六箇条を漢文調に
"林泉"は広葉樹林と清流
"湯治"は温泉療養
最後の句で両都市と過疎地での生活を総括