【マインドフルネス 一鉢三声鐘①】2025.5.17
一昨年、ベトナムと日本の交流会が、天恩寺(浜松市内のベトナム寺院)で開催された。
瞑想についての説明されたタン師は、フランスのプラムビレッジで13年間、ティク・ナット・ハン師に仕えた方だ。常に微笑みを絶やさず、ピースフルな雰囲気を持っている。ジョークも上手い。
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これから食事の瞑想を行います。どんなときでも、自分の心に気づいているという瞑想です。
好きなものを皿に盛り、先生の後について皆が集まってから食べ始めます。15分ほど、沈黙しながら料理をいただきます。
「食べる瞑想」とは、いま自分が食べていることに気づく瞑想です。
観察する力を使って、いま何を食べているのか、どのように食べているのかに気づいていきます。
その実践は簡単です。皆で一緒に行うと、さらにやりやすくなります。食べることに集中すると、味わいが一層深まります。30回ほどよく噛んでからいただきます。手に持って、噛んで、食べ物がお腹に入る。そのことに気づいていきます。
気づきの心を持って、この料理ができた背景を考えてみましょう。雨や大地、太陽の光、作った人の働きなど、すべてが集まってこの料理ができています。そのことを通して、宇宙全体が私を支えてくれていることに気づきます。また、さまざまな人が集まっています。そうした人々にも気づきながら、いただきます。それが禅の心です。
とても簡単です。緊張する必要はありません。ただ観察力を使って、おいしく食べることができるのです。
これから鐘を3回鳴らしますので、その音を聞いたら食事に入ります。
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食べる瞑想以外にも、鐘を聞く瞑想があります。
話していたなら、それを止めて鐘の音に集中します。そして、自分の呼吸に意識を向け、それに気づいていきます。
鐘の響きを聞いたら、「いま自分は考えている」ということに気づきます(何を考えているかではなく、ただ考えているという事実に気づく)。「いま何をしているのか」に気づきます。それが禅の実践です。
いまこの瞬間に自分は生きている。それが最も大切な幸せです。
未来のことや心配事、後悔など、頭の中にいろいろな思いがあっても、いまこの瞬間に生きているということを忘れがちです。鐘の響きで、いまここに生きていることを感じてください。
お寺に来ることは、そのことをリマインド(忘れず、常に気づいている状態にする)するためでもあります。お坊さんとして、そのことを皆さまに伝えるのは私の責任です。そして、自分自身にもそのことをしっかりと思い出させるためです。
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自分を観察し、呼吸や体の状態に気づいていきます。**努力する必要はありません。
「息」という字は「自分の心」と書きます。「念」は「今の心」と書きます。
今の自分の心の状態や呼吸していることに気づく。それによって、いまこの瞬間に生きていることに気づいていく。それが仏道です。
だから、何をしていても仏道の実践になります。それがマインドフルネスです。(続く)
禅食(ぜんしょく)
一鉢三声鐘(いっぱつ さんせいのしょう)
嚼香三十重(しょうこう さんじゅうじゅう)
日照田畑暖(にっしょう でんぱんだん)
雨滋宇宙同(うじ うちゅうどう)
〈書き下し文〉
一鉢(いっぱつ)三声の鐘(しょう)
香を嚼む三十重(さんじゅうじゅう)
日は照らす田畑(でんぱた)暖かく
雨は滋(うるお)す宇宙同(どう)
〈現代語訳〉
一つの鉢と三つの鐘の音
三十回噛むごとに広がる香り
太陽は田畑を温かく照らし
雨は宇宙全体を潤す
「解説」
押韻:鐘(しょう)・重(じゅう)・同(どう)の平声韻
- 核となる「鐘」「三十回咀嚼」「自然の恵み」「宇宙との一体感」を4句に凝縮
- 「同」字で宇宙との共食を暗示的に表現
- 漢詩の「起承転結」を活かしつつ、余韻を残す