過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

【桃農訪友記】2025.5.9

【桃農訪友記】2025.5.9

かつては白い紀州犬がいたが、もう代替わりしていた。
ワンコ(花ちゃん)は、私たちを見ると「ウー」と唸って吠えていた。  
でも、尻尾は振っている。

警戒しているけど、本当は仲良くなりたいんだろうな。
そこで、あかりに「こうやってワンコと親しくなるんだよ」と模範を示した。  
  ▽
まず、上から見下ろさない。頭を上から触らない。
ワンコは警戒して、ガブッと噛むことがあるから要注意だ。
こうやって、まず自分が座る。そうすると、ワンコも安心するんだ。
そして、しばらく見つめ合う。
そっと手を出す。そっとね。上からじゃなくて、下から。
すると、ワンコは匂いを嗅いでくる。
ペロッと舐めてくれたら、もう警戒は解けた証拠だよ。
ほら、ペロペロしてくれてるでしょ。
もう大丈夫。でも、ここで急に立ち上がると噛みつくこともあるから、座ったままでいる。
お、ゴロンと横になった! お腹を見せてくれた。
これで、完全に信頼してくれたってことだよ。もう大丈夫。
こうやってお腹を撫でて、それから頭を撫でると、ワンコは喜ぶんだ。 
 
あかりも、おそるおそる頭を撫でる。
ワンコはもうすっかり気持ちよさそうに、されるがままになっている。  
  ▽  
14年ぶりに訪ねた井元さん。五條市の桃農家だ。
大学のゼミの合宿で5分ほど話して住所を交換した程度の関係だった。
大学時代の唯一の友人といえば、今や彼しかいない。

ゼミ(憲法の浦田賢治)は難しすぎて、私も彼もついていけず、脱落した。
奥様が丁寧に手紙をくださり、年賀状のやり取りを通じて友情が続いてきた。  
いつも私のことを気遣ってくれて、美味しい桃や柿、蓬の餅を送ってくれる。
こちらでお返しするものがないと伝えると、「ええんや、ええんや、あんたが元気でいてくれたらそれでええんや」と。  

そんなわけで、金峯山寺を参拝するついでに、友人を訪ねることができた。
「お互い年を取ったなあ。後継者はどうなるの?」
「いやあ、もう後を継ぐ者はおらん。わしらで終わりや」
広大な桃の畑がもったいないけどなあ。  

※写真は14年前のときのもの。

『桃農訪友記』

白犬已替:白犬已(すで)に替わり
吠尻搖情:吠えて尻(しり)搖(ゆ)るぐ情
示女親犬法:女(むすめ)に示す 親しむ犬法(けんぽう)
座視徐撫成:座して視(み)つつ 徐(おもむろ)に撫でて成る

十四年後:十四年の後
再訪桃農:再び訪れし 桃農(とうのう)

共嘆年邁:共に嘆く 年の邁(ゆ)く
絶業堪憂:絶えんとする業 憂え堪えず

白い犬はもう代わっていた
吠えるが尻尾を振る複雑な心情

娘に犬と親しむ方法を教える
座り見つめゆっくり撫でて成功する

十四年ぶりに
桃農家の友人を訪ねる

共に年老いたことを嘆き
途絶える農作業を憂える

解説
漢詩の「起承転結」を意識し、犬との交流(承)から人生談義(結)へ展開。「徐撫成」は「座って→見つめて→撫でて→成功」のプロセスを三字に凝縮した点睛の句。