過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

【天命庵のこと】2025.3.31

【天命庵のこと】2025.3.31

二階で寝ていると、桃の花と柿の木の若葉が見える。雨粒がトタン屋根の上にぽつんぽつんと落ちる音。不規則で優しいリズムが心地よい。
寝ながらその音に耳を傾けていると、時間がゆっくりと流れ、頭の中のざわつきが静かになっていく。
一滴一滴が落ち、広がり、また次の音が続く。雨の日もまた、小さな幸せが感じられる特別な時間だと思うことにした。  
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エッセイストで視覚障害者の三宮麻由子さんが、雨の音を聞くのが嬉しいと言っていた。雨の音によって空間の広がりが感じられるからだ。トタン屋根に落ちる雨音、車に落ちる雨音、地面に落ちる雨音。音の響きによって、物がどこにどうあるのかが分かるという。  
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「今日はゆっくり雨音を聴きながら、自分の心をたずねてみましたか。
あなたがこの庵にご縁をいただいて、自然体の深い心をいただいて、今、さまざまな活動の中で頑張っているのを、ちゃんと後ろから見守っていますよ。

みんなの心に温かいものを結んであげてください。
今の人はとても愛を求めています。とても優しさを求めています。優しさが、やはりみんなの心に欠けているんですね。
だから、これからあなたが人に結ぶものは、優しさですね。いたわりですね。  
温かい心、温かい言葉、温かい物語をみんなにつないでいく──それがとても必要なことですよ。
あなたも、私から見たら子どものようなもの。あなたに立派ないい仕事をしてもらって、嬉しい笑顔をいつも見せてもらうこと、それが喜びですよ。

静かに雨音を聴き、自分のなかにある優しさに問いかけながら、これから一つ一つ、読み物を作らせてもらうんですよ。
これからは、愛が課題です。
愛をテーマに素晴らしいものを描いてください。そのことを期待していますよ。
どんな人にも分かりやすく伝えてください。
何も分からない人にも『いいねえ』と言われるような、素敵な読み物をつないでくださいね。今日は、ご苦労さん。」  
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雨が降り続く日に、湯河原の天命庵でお話をいただけるのを待っていた日。順番が回ってくると、おやさまは私の手を取ってこのように話してくださった。あれからもう30年も前のことである。