過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

筆ペンのスケッチ

【筆ペンのスケッチ】2025.2.26
① いつもメモ用紙と筆ペンを持っている。
② スケッチは観察を深め、風景と心象が鮮明に記憶に残る。
③ うまくなくてもいい。「いい加減さ」が味になればいい。
  ▽
いつもポケットにはメモ用紙と筆ペンを持っていた。
京都の古い町並みや浅草を歩けば、祇園や清水、せんべい焼きをさらさらとスケッチした。職場では、受付に飾られていた花を昼休みに毎日描いていた。
スケッチをしていると、観察が深まり、目に映る風景が心に刻み込まれる。
その一枚一枚には、その瞬間の心の揺れまでが染み込んでいる。
かつて描いたスケッチを見ると、若かりし日の感情が鮮やかに甦ってくる。
  ▽
インドの喧騒にまみれた旅路でも、埃っぽい道端で筆を走らせた。
ある日、旅先でカメラをなくしてしまった。
「困ったな。仕方がない」──すぐに気持ちを切り替えた。
持っていた万年筆を取り出し、スケッチを始めた。
汗と笑顔にまみれたインドの人々が興味津々に近寄ってくる。
一人、また一人と増え、やがて30~40人もの人に囲まれたこともあった。
「赤ちゃんを描いてくれ」「おじいさんを頼むよ」と次々に声がかかった。
「ああ、いいよ」と応じて描いてあげた。
列車に揺られながらスケッチを始めれば、車内の人々が好奇心で集まってくる。
言葉は通じないが、自然と笑い声が響き合った。
  ▽
こないだ、あかりと書店に行った。
書店、そしてサイゼリヤで食事してダイソーに寄るのが、あかりの楽しみだ。
あかりは一時間でも二時間でも読みふけっている。
読書が好きになってくれれば、もう十分だ。読書を通して、どんどん自分で探求していけるから。やがてはものを書けるようになればいい。
おとうちゃんは、立ち読みは無理。もう体力がない。
近くの椅子と机に座って、メモ帳に筆ペンで殴り書きしていく。企画のアイデア、ひらめき、これからやりたいこと。絵みたいな字で書きなぐる。自分でも読めないほど乱雑だよ。その「いい加減さ」が味わいとなる。
筆ペンで書きなぐっていると、新しい光が降りてくる。
  ▽
ときにスケッチするが、デッサンの技術なんて持ち合わせていない。
きちんと描こうなんて思わない。かなり適当だ。
そんなおとうちゃんの姿を見て、あかりも筆ペンで描き始めた。
「描き味が楽しいね」──あかりは目を輝かせる。
「そうなんだ。いい加減に描くほどいい。〝らしく〟見える。それが、筆ペンの魅力だよ」
描いたのはお父ちゃんの姿だ。普通に描いたものとデフォルメしたもの。そして、店内の雑踏。
そうだなあ。あちこちで描けるのもいいけど、一日一絵を目標に描き続けようかな。
親子でスケッチリレーをしながら、ゆるやかな時を刻んでいくのもいいな。(1から4枚目はあかりのスケッチ、5枚目はおとうちゃんの下記なぐりメモ)