過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

病院にいるいろんな患者さんたち

①やることがなくて時間ある人は心配ばかりしている
②身体が衰弱して壊れて死んでいくだけ、それを観察すればいい
③自分から行動を起こさないと、行政のほうから手を差し伸べることはない
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今回は、相部屋なので、いろいろな人との出会いがあった。
隣の人は、肺がんが転移、心房粗動、間質性肺炎。77歳。土建業に長いこと携わっていたという。

一ヶ月くらい入院するという。愛想のいい人で、朝、向こうから「おはようございます」と声をかけてくれる。退院するときには、エレベータまで送ってくれた。

心配であれこれ考えて頭がいたい、とよく嘆いていた。毎月16万円も医療費がかかるとか、先行きが心配だとか。

でも聞けば、生命保険に入っている、ちゃんと年金がある、家も土地もある。子どももしっかり社会人。ぼくなんか、生命保険はいってないし、年金なんて月に5万円程度。
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──なんにも心配することないじゃないですか。身体が衰弱して壊れて死んでいくだけだし。毎日、楽しめることってたくさんありますよ。

「そういわれても、頭が痛くて‥‥」

──まずは、間質性肺炎と診断されているわけでしょう。そしたら、医師とやり取りして「特発性間質性肺炎」と診断してもらって意見書を書いてもらう。指定難病になれば、医療費はぐんと安くなる。身体障害者の申請もすればいい。

あと、大事なのは退院してからの暮らし。奥さんに世話になるので、たいへん。介護保険をうまくつかって、訪問看護訪問介護を受けるようにしたらいい。

それには、まずは地域包括にいって、やりとりして介護認定受けて‥‥。
こういうことは、行政のほうから決して動いてくれない。自分から動かないと進まないです。
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そんなやりとりをした。
いっぺんに言うと、混乱するようなので、熱心にメモしていた。

「こんど、春野町にいっていろいろと教えてもらいたい」という。連絡先をお伝えした。

──なんなら、いまここで、ぼくが地域包括に電話してあげてもいいですよ。そうしますか?
「いや、いろいろと考えてから‥‥」
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とまあ、いいひとなんだけど、病院にいると時間があるので、いろいろ考えると、心配で頭が痛くなるってことだろうな。
私と話をすると、いろいろ道があることはわかるようだけど、それを整理して実行するまでは難しい。私も、手とり足取りフォローする役割ではない。

ということで、あれこれ言うのはやめて、もっぱら自分の読書に集中した。30冊くらいは読み込んだよ。
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3人目の患者さんは、挨拶もなく、カーテンを閉めてこもりっきり。さかんに、ナースコールばかりして、あれがない。これがないと言っていた。要介護度3〜4くらいにみえる。こちらとは、まったくやりとりはなかった。

あるとき、病室の階を間違えてぐるっとまわっていたら、胃瘻と栄養点滴で、もう口だけ開けて無表情でぼわーっとしたお年寄りばかりの部屋もあった。

談話室みたいなところにはテレビが据えてあって、その前には、お年寄りが二人。朝から晩までずっと見ている。話しかけても、耳が遠いのかまったく無表情。

次から次へとくり出すあんな映像を見ていたら、廃人になってしまうなあ。テレビは廃人量産装置だ。考えるということをさせなくするシステム。

まあ、そんなことを観察しつつ、私は次々と読書に専念していた。