寝る前にいつも読んでいるのが、『吾妻鏡』(あづまかがみ)。
おなじ鎌倉時代の読み物としては、『平家物語』のような楽しいものではない。が、鎌倉時代の宗教の様子がうかがい知れるのが興味深い。
それを読むと、仏教は鎮護国家の教えであり、病気や災厄を除くための加持祈祷としてお経が読まれているのがわかる。よく出てくるのが陰陽師。法位方角、厄払いなどで活躍している。
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『吾妻鏡』は鎌倉時代に成立した日本の歴史書。全52巻。
鎌倉幕府の初代将軍・源頼朝から第6代将軍・宗尊親王まで6代の将軍記。
平氏政権の滅亡、鎌倉幕府の成立、承久の乱、執権政治の始まり、得宗支配の確立など。日本の中世を知る上では欠かせない歴史書。事実を中心とした記述が主だ。
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さて、日蓮が北条時頼に提出したのが『立正安国論』。
地震や津波などの天変地夭、飢饉、疫病が起きて、死者が累々としている。「天変地夭 飢饉疫癘 遍く天下に満ち広く地上に迸る 牛馬巷に斃れ骸骨路に充てり」「天神地祇を拝して四角四堺の祭祀を企て 若くは万民百姓を哀んで国主国宰の徳政を行う、然りと雖も唯肝胆を摧くのみにして弥飢疫に逼られ乞客目に溢れ死人眼に満てり」(立正安国論)
そもそも、こうなった原因は何かと問う。
それは念仏という誤った教えにあると日蓮は断言する。念仏という誤った教えによって、国を守護する諸天善神が去ってしまった。そこで、悪鬼が入り込んで、三災七難が起きていると警鐘する。
「世皆正に背き人悉く悪に帰す、故に善神は国を捨てて相去り 聖人は所を辞して還りたまわず、是れを以て魔来り鬼来り災起り難起る」(立正安国論)
その根本的な解決法は、正しい教え、すなわち『法華経』を信ずること。そうなれば、国は平安となり安穏となる。このまま放置すれば、他国から攻められ、国内で内戦が起きると予言する。この予言は、蒙古の来襲となってあらわれるのであった。
まあ今の時代のような、伝染病、戦争、たくさんの人が死んたでいくという現実の中で、日蓮は幕府に対して、正しい思想を基にして政治を行えて迫る。日蓮にとっては、『法華経』こそが「正しい教え」でした。まあ、強い思い込みと言えます。そこの検証の問題は多いにある。
ともあれ、日蓮はあまりに激しい他宗攻撃のために、数々の流罪(伊豆や佐渡)を蒙り、やがては身延山に隠遁することになる。
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その隠遁時代、弟子や檀那とやりとりした消息文がたくさんある。信念を貫き通した不屈の人というイメージが強いが、弟子思いの人情家としての人柄がとても味わい深い。
そんな日蓮の活躍した時代背景を知るための一助として、吾妻鑑を読み始めている。