話がいよいよ盛り上がってきた時に、司会進行の鎌田東二さんが「松岡さん、ごめんなさい。もう時間がないんです」と言われて「ええ!?」というやりとりがあったのを覚えている。
▽
松岡正剛氏が亡くなった。立花隆もそうだったが、まさに〝知の巨人〟であったろう。かつて、講演には接したことがある。
もう30年くらい前のことで、当時は、まださほど有名ではなかった。
その著作『知の編集工学』は、わずかに読んではいるものの、内容は難しくてぼくにはわからない。
▽
声の響きは低音と倍音効果で深みがあった。
行基について語っていた。役行者と同時代で、国家権力の枠外で活躍した民衆仏教者であった。しかし、大仏を建立するにあたって、行基の存在は利用価値が大きく、国家は行基を大僧正にして、全国行脚で大仏勧進をさせたというような話し。
いかに、国家が宗教を取り込んできたかという、いよいよこれからという話であったが、「はい時間切れ」ということになって残念そうであった。
▽
あの時の集いは、いろいろすごかった。
漫画家の楳図かずお、美内すずえ、メビウス気流法の坪井香譲など、とてもユニークな人ばかり。
そういう人たちがくつろぐ楽屋裏みたいな所を訪ねた。楳図さんは、気軽に色紙にサインと漫画を書いたりしていた。あのとき、書いてもらえばよかったなあ。