過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

あかりがなにか手伝えることはないの?

──さあ、あかり。食器を洗うよ。
「もう寝ねなくちゃいけないのに……」

──そうだけどね。でも、朝起きたら、台所に汚れた食器がたまってると嫌でしょう。前の日に洗っておいたら気持ちいいんだよ。
「たしかにそうだね」

──これはカルマといっしょでね、ぜったいにやっておかなくちゃいけない。自分でやるしかないんだよ。
「うん、よくわからないけど、いっしょにやろう。おとうちゃん、スポンジを取って」

──はいよ。
ごしごし。ざーざー。
「おとうちゃん、お椀はね、こうして逆さにしておけば水が切れていいんだよ。それじゃあ、水がたまったままでしょ」
──ああ、そうだね。よく見ているね。感心感心。
 ▽
「あのね、おとうちゃんはいそがしいの?」
──うんまあ、いつも仕事はあるんだね。

「なにやってるの」
──おとうちゃんは、文章を書くのが仕事だからね。毎日書いている。
「そしたら、どうなるの」

──たとえばFacebookに書くでしょう。そしたら、いろんな人が読んでくれる。コメントももらえる。そしたら、ああなるほどって、新しい考えがわかってまた書ける。それを続けていくと、やがて本になっていくんだね。

「本になれば、売れるの?」
──そこは、わからない。売れる時もあれば売れないこともある。まあでも、おとうちゃんはこれを死ぬまででつづけていくんだよ。それが好きだしね。
 ▽
「そうか。じゃあ、あかりがなにか手伝えることはないの?」
──うん。それはありがとう。でも、いまはないかなあ。おとうちゃんが書いている時に、静かにしてくれればそれでいい。

「すらら(一人で学ぶ学習教材アプリ:対話型)やってると、うるさいでしょ」
──そんなことないよ。おとうちゃんは音は全く気にならない。あかりが自分で挑戦して勉強しようってしてるわけだから、嬉しいことだよ。