過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

実地指導について

「実地指導」がくる。
実地指導とは、都道府県および市町村から担当者が事業所へ出向き、適正な事業運営(ケアマネジメントやコンプライアンスにのっとった業務)が行われているか、確認すること。

うちの場合は、すでに廃業の届け(12月20日から廃業)を出しているので、いまの施設のありようというよりも、過去にさかのぼって、監査というのか「不正」がなかったのかチェックされる。

まあ書類はある程度整備しているとはいうものの、やはりヌケはある。利用者さんのサービス契約書、介護計画書、重要事項説明に印鑑が押してなかった。従業との雇用契約書はどこだっけ。資格証明書は、などおおわらわ。

第一回の実地指導はコロナのために延期。次の日程は、妻の手術のために延期、そして年末ということになった。「わっ、書類の整備がまだできてない、なんとか来年の1月にしてくたさいませ」。三拝九拝したが、ダメということに。
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ということで、12月27日に二人の職員が来訪。
「おいそがしいところ、もうしわけなかったです」と丁寧。柔和で粘り腰。ちっともえらそうじゃない。

「まず、運営規程」を見せてください」。
──こちらにコピーはあります。施設に張り出してあったんですけど、もう廃業するというので、こないだ薪ストーブで燃やしてしまいました。古い書類はあれもこれも。どんどんと燃やしました。

「のこしておいてほしかったですね(笑 。2年間は保存してもらいたいんです」

──すみません。

「施設が休業に入った直前の月だけでも見せてもらえますか。まず、雇用契約書、勤務形態、タイムカード、機能訓練指導員の有資格証。苦情処理のデータ、さらには避難マニュアル、避難訓練の記録」。

──はいここに。ただ避難マニュアルはつくってないです。災害防止マニュアルはあります。避難経路はこうなっています。避難訓練ですか? それはしてないんですよ。なにぶん少人数なので、日々目が行き届きますので。

「わかりました。では、利用者さんの利用契約書と重要事項説明書をみせてください。介護計画書も。ええと、この人の利用時間について、この日は午後からですけど、どうしてですか」

──はい。その方は、要支援2でして、体調の良いときにだけ連絡いただいて、わたしが送迎する形です。この日は、午後からのご利用でした」

……みたいなことを2時間くらい。あとは、施設を視察。

「いいところですね。やめてしまうのはもったいない。なにか利用できるといいですね」
──はい。なんとか、子どもを主体にした多世代交流広場にしようと企画しています。

ということで、無事完了。やれやれ。
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実地指導で不正が見つかる場合がある。運営に必要な人員配置をしていなかったり、虚偽申請すると、指定取り消しなどの行政処分、さらには刑事告訴、不正に受け取った給付金は加算額を加えて数千万円の支払いを求められるケースもある。そうなると、法人は自己破産。事業はおしまい。

福祉施設はこの人員配置が苦しい。
たとえば、デイサービスだと利用者10人に対して看護師が必要。機能訓練指導員が必要。施設長、管理職。生活相談員。介護職が必要。たった一人の利用者であっても、管理者、生活相談員、介護職も機能訓練指導員が必要なので、人件費倒れを起こしてしまう。
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そこで、苦肉の策で、なんとか資格者の人員が配置されているように工作すると、つじつまがどこかであわなくなる。で、見破られて大変なダメージを受けてしまう。デイサービス、訪問介護、放課後デイなど、廃業に追い込まれているところはたくさんある。

まあともあれ、福祉施設がらみ、行政の管轄の仕事は、規則と人員配置で、たいへんなのだ。専門の事務職がいないと抜けが出てしまう。3年間、デイサービスを経営してみて、もうこりごり。赤字ばかりで気苦労ばかり。ということで、業態返還に舵を切ったのだった。ああ、勉強になりすぎたなあ。