過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

墓地公園で半年間、車中泊していたんですよ

「墓地公園で半年間、車中泊していたんですよ。それは名古屋の平和公園墓地といって広くて静かでよかったです」

Yさんがカヤックで気田川に遊びに来る帰りに、寄ってくれた。聞けば、名古屋で半年間、送迎の仕事していたという。

宿泊費を浮かすために、車中泊。その場所としては、平和公園墓地はうってつけ。墓場というと、こわそうだ。でも、そこはすっきりしていて、ちっとこわいことなんかなかったという。ときどきおまわりさんが見回りに来たが、いつもおなじみで、気をつけてねという程度だったという。

──でも、風呂とは食事はどうしたの?
「たまに、ネットカフェに寄るんです。ネットカフェってこれまで、オタクの巣窟で、汚れたイメージがあったんでけど、すごくきれいなんです。シャワーは浴びられる。朝食はお替わりし放題。ふかふかの落ち着く椅子。仮眠もできる。そして安い」

なるほどねえ、墓場で車中泊、そしてネットカフェ。おもしろい。そうなんだ。ぼくはカプセルホテルしか知らないので、いちどためしてみたいな。
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Yさんにとって、墓場はすこしも怖いことはなかった。けれども、この町場(といっても過疎の山里だ)に少し気になる話がある。
近くに寿司屋があって、Yさんはカヤックスクールを経営するTさんと二人でよく食べに行く。

店に入るYさんとTさんは、カウンターに座る。
すると、座敷に女子中学生が座っていた。目と目があったので、かるく会釈した。むこうも会釈した。

寿司をたらふく食べて、Tさんのところに帰って雑談。
「ところで、あの寿司屋に女の子がいて、あの時間だし、ちょっと不思議な感じだよね」
そう言うと、Tさんは、「ええ?そんな子いなかったよ」という。

しかし、Yさんはちゃんと見た。「ちゃんといたよ」。「じゃあ、寿司屋のおやじに聞いてみよう」と電話すると、「いや、YさんとTさんしかいませんでしたよ。女の子なんていません」

そう言われたのだ。え!それってもしや、幽霊……。
そういえば、着ている服は、どことなく昭和の雰囲気だった。

それ以来、幽霊が怖くなったというのであった。