過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

佐久間から水窪に

製材と木工、建築のプロ、ウッドインの広山さんを訪ねた。
木の宝庫。木の組み方、キャンピングカー、ぶどう棚、ネギやトマトの育て方を教えてもらう。
ひのきで作ったアルペンホルンを吹かせてもらう。
なんともすごい工夫の集積の方だ。
 動機は、「ただ楽しいから、おもしろいからやってみよう」という方である。
もう84歳になられる。ひとり暮らし。
なので、学べるうちに学ばせてもらわねば。
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おなじ天竜区でも、佐久間まで春野から1時間半。どちらも山奥だ。
さらにその先に水窪(みさくぼ)がある。高山が東西にがそびえ、まんなかを清流がながれる。
佐久間のイベントの後は、「さあ、水窪まで行こうか」ということになった。
ここは平成の大合併で浜松になったのだが、どちらかというと南信州文化圏。
風土が違う。たとえば、1300年も続く夜通しの神事、仮面劇の西浦田楽(にしうれでんがく)がある。父子相伝の神事。神様に捧げる舞である。イベントや観光ではない。日本の古典芸能、能と狂言の源流。重要無形民俗文化財の第一号。そんな祭が続いている集落という意味でも、特殊なエネルギー、余韻がのこっているのが水窪だ。
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水窪にはあちこちに、友人がいるので、訪ねた。
「どうも。ひさしぶりに顔だしました。あかりもこんなにおおきなりました」と挨拶する。
水口さん。きりっとした武家の奥方のようだ。草木染め、織物、琴を見事に弾かれる。
元気なお茶の袴田さん。NPO法人WILLの平沢さん。還暦食堂の磯平さん(還暦になって世田谷の三軒茶屋から移住、寄り合いの場としての食堂経営)。
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山里は不便この上なし。しかし、人の魅力がたくさん。
東京暮らしでは味わえなかった、すごみ、奥深さがある。
じつは山里に住むにしても、温泉があって広葉樹の森があって、深い文化遺産があって、古老が深い真理を伝えてくれるというのがいいんだけど。しかし、そうはうまくいかない。
ま、住めば都。あちこち、うごけば、すごい人がたくさんいるのだ。その方に出会うというのが、じつにおもしろい。学びが深い。
「千里の馬は常にあれども伯楽は常にはあらず」韓愈(八~九世紀、唐王朝の時代の中国の文人
身近に、千里の馬はいるのだ。でも、見出す人がいない。僭越ながら、その見出す、つなげる、つたえるというのが、醍醐味、たのしみではある。