過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

お姫さまと魔法使いのおばあちゃん

あかりはよく言う。
「魔法がつかえるお姫さまになりたいの」。

──そうなんだ。でも、おばあちゃんじゃないと魔法は使えないんだよ。お姫さまは魔法が使えない。

以前、そんな話をしていたが、またその話をした。さあ、どうする。
「やっぱり、お姫さまになりたい」。

──じゃあ、こうしたら。魔法つかいのおばあちゃんになって、若いお姫さまに化けてしまうの。自分にも魔法にかけてお姫さまになりきるの。
そうして、死んだ時、ああ、自分はおばあちゃんだったんだって、はじめて気がつくというのはどう?

「魔法が使えなくてもお姫さまがいい。それから、すてきな王子様があらわれるのを待つの」。

──うーん。でもね、あかりちゃん。お父ちゃんに優しくしないと、すてきな王子様は現れないんだよ。
そう言ってみたが、無言。

そのうち、静かになった。おしっこもらしちゃったようだ。
替わりのパンツがない。

「お父ちゃん、なにか貸して」。
──うーん。おとうちゃんのパンツじゃ大きすぎるしなあ。そうだ、ふんどしを貸してあげよう。

ふんどしをつけてあげた。おもしろがって走りまわっていた。ふんどし娘だ。
やがて近くの公園で、友だちのあそぶ声がした。

──Rくんがきているよ、あかりちゃん。
「いきたい!」
──行ってきたら。
「うーん。でも、やっぱりやめた。だって、こんなカッコじゃ恥ずかしいもん」。

オチをどうしようかと考えだけど、オチはなし。きょうのリアルな出来事でありました。さっきみたら、廊下にふんどし捨ててあった。うちは明日から仕事だ。