過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

郷土史研究家の木下さんから和文タイプライターなど

「終活なんだ。もらってくれんか。昭和史を研究している人はいないか。『昭和天皇実録』60巻がある。高松宮日記(全8巻)もあるぞ。それから、静岡県史(通史編全6巻、資料編全26巻、別編全3巻)もある」。
 
木下恒雄さん(86歳)から電話をいただいたので、訪ねた。
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木下さんは、春野町の碩学郷土史研究家。東京で警察官をされ、30年前に故郷の春野町に戻られた。
 
これまで、林業史、茶業史、災害史、村落の成立史など、30冊余の著作がある。「お茶の文明史」「山林の思想」「遠州林業史」「嫁取り婿取りばなし百話」「山国兵士の出征ものがたり」『山の人生 川の人生』「自然災害史」「山里にやってきた文明開化」など。
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一冊の本を仕上げるのに100~300人くらいに会う。テープレコーダなど使わない。メモして頭の中に記憶している。これらは、警察官時代の聞き取り調査の体験が元にある。
 
また、資料の収集も半端ない。国会図書館から明治時代の新聞をコピーして送ってもらい、克明に災害の年表をつくり整理して書いた。
 
スペイン風邪についても、三遠南信の地方紙、郷土史を読み込んで調べている。いまは、村の昭和史の執筆中だ。
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書斎だけの人ではない。毎年100本ものサクラの苗木を河川敷に植えてきた。10年以上も続けたから、累計千本以上にもなる。幼稚園児のために芋作りも、20年以上もされてきた。
 
ワープロなど、まだ世の中になかった時代、本を書くために和文タイプライターを独学で習得した。活字を拾いながら原稿を打ち込んだ。それで本を3冊つくった。その和文タイプライター3台をもらってほしいというのだ。
 
「重たいので、友人と軽トラで、和文タイプライターをそちらにもっていく。それから謄写版はいらんか。写真の現像機はどうだ」。ありがたく大切に保管させていただくことにした